minga日記

minga、東京ミュージックシーンで活動する女サックス吹きの日記

キューバ音楽旅行記2 「サンテリア」と「ソン」

2016年12月24日 | 
「キューバに行ったら、ぜひサンテリアを体験するといいですよ。」

大儀見元perちゃんがヤハギジャズに参加してくれたときに、アドバイスをくれた。元ちゃんもサンテリアのバタドラムを勉強するために1週間滞在して戻ったばかりだったのだ。

ブラジルではカンドンブレ、キューバではサンテリアという、神様に捧げる儀式のようなもの。冠婚葬祭などで個人の家でパーカッショニストたちが集まり朝から夜までずっと演奏をする。これはもともとアフリカから来たもの。ただ、コンサートではないのでいつやるかは全く情報がない。どうやったらサンテリアを見学できるのだろう・・・・・。

そんな中で、河野さんから「友人の家でサンテリアをやるらしい」と聞いたのでタクシーでかなりDeepな住宅街まで行ってみたが、結局どこでもやっておらず、仕方なく戻ってきた。連れて行ってくれたタクシーのお兄ちゃん(マイケル)はとても面倒見がよくて、最後までその家を探そうと一緒に手伝ってくれたのだったが。丁寧にお礼をして家に戻ることにした。

がっくりしながらも、ハバナビアヘ(旧市街)に再びでかけると、セビージャホテルから素敵な音楽が聴こえてきた。中庭のようなところに入っていくとカフェの隅で4人組のソングループが演奏している。「ソン」というのはサンティアゴ・デ・クーバが発祥の音楽。トレスという3本(複弦)弦のギター、ボンゴ、ウッドベース、ボーカルという編成。ベースはなぜ隅っこで反対向いて弾くんだろう?と思ったら生音なので、壁に向けて弾いたほうが音がよく響くのだった。それにしてもメインボーカルも生声でよく通る声だ。

ソンのバンドの動画@Sevilla Hotel

全員がコーラスをするのだが、そのハーモニーが美しい。そしてびっくりするくらいトレスの青年がうまいのだ(あとで本場のサンティアゴに行ってたくさんソンのバンドを聞いたが、このトレスの青年がダントツに上手かった)。思わずノリノリで聴いていたら、さっそくボーカルのおじさんが話しかけてきた。彼らのCDを10セウセで購入してあげると大喜び。さらに音楽家だと告げると、ぜひ土曜に楽器を持って遊びにおいで、と誘ってくれた。こちらに来てソンが大好きになった私としてはまたとないチャンスなので、金曜の3時に来るね、と約束して別れた。



夜は河野さんperの率いるグループを聴きに「コイーバホテル」に向かった。彼の他にも黒人のパーカッション(特にバタドラム)、サックス(フルートも吹くマルチプレーヤー)、エレクトリックベース、キーボードの5人編成。日本の民謡をアレンジしたものやジャズの曲などをラテンにしたものなどを演奏していた。特にバタドラムの黒人パーカッショニストが素晴らしかった。



この何日かあとで、夕方、家の近くを歩いていると民家からバタドラムの音が聴こえてきた。あ、サンテリアだ!!偶然にもサンテリアに出会えるなんて。音に引き寄せられるように歩いていくと、若い女の子たちが私たちに「おいで、おいで。」と誘ってくれる。入り口の部屋で黒人の青年3人がバタドラムを叩いている。「こっちにおいで。」と連れられた細い廊下にいろいろな飾り物とお供え物のようなお菓子がたくさん置いてある。その中からケーキのようなものを一つづつもらい、お供え物の前にある皿にお金を入れるように指示される。いくらでも良いので1人づつ1セウセを払う。するとさらに奥の部屋に連れて行かれ、「今日はこの子の5歳の誕生日なのよ。」と真っ白い上下のおしゃれをした可愛い男の子とお父さんが部屋にいてご挨拶をする。お誕生日にもサンテリアをやるんだな。

バタドラムのリズムは複雑で面白かった。その中でみんな狂ったように踊ったり飲んだり食べたり。疲れると、次のパーカッショニストたちと交代し延々と演奏が続いている。この儀式は映像などはだめだよ、とみんなから聞かされていたので外からこっそり撮ったものをここにアップしておきます。興味あればどうぞ。



サンテリアの映像(外から)

そして、突然セサル・ロペスから「金曜日、Jazz Cafeに来るのなら、ぜひ楽器を持っておいで。」というメッセージが届いていた・・・・(つづく)。











キューバ音楽旅行記1 ハバナ到着

2016年12月23日 | 
シアトルジャズフェスから戻って、矢作のコンサートを終え、11/14(月)さあ憧れのキューバだ!

キューバの音楽をもっと知りたい。社会主義国ってどんな感じなんだろう?「キューバフェリス」「ブエナビスタ」「Cubap」という3本の映画に魅了されていた私は、アメリカとの国交が回復し、どんどんアメリカナイズされてしまう前のキューバを一目みたいと思っていた。キューバ音楽の魅力はなんなのか、知りたかった。そしてカストロもまだ生きているうちに。なんとしても行かねば。

そんな思いから今回の音楽旅が始まった。知り合いがいるわけでもない。ただ楽器を持参していけば、なんとかなるさ、音楽の国だもの。と無謀にも。

メキシコシティ経由でハバナの空港に到着したのは夜の9時過ぎ。そこから荷物検査が始まってしまい(梱包していたバリトンもベースも全て開けさせられた)・・・飛行場の外に出られた時は夜中の11時すぎだった。宿の人に頼んでおいた車が2台、迎えにきてくれていたので一安心。そして元ちゃんに紹介していただいた河野さんというパーカッショニストも出迎えてくれた。河野さんは30年もキューバに魅了され住んでいるのだが、物資の少ないキューバではPA機材が必要、ということで彼に渡すために日本から持ってきたのだった。

唯一の日本人ということで私たちは河野さんに質問攻め。彼は嫌な顔ひとつせずにニコニコと答えてくださった。このあともいろいろと役に立つ情報などをいただいたり、「困ったときの河野さん」が合言葉のように(苦笑)とてもお世話になる大事な人物となったのだ。

お迎えはお世辞にも綺麗とは言えない、例のクラシックカー(アメ車)だ。大荷物なので2台に分乗して乗り込む。ガタピシ走り抜けるキューバの街はガソリンと排気ガスの匂いが充満していて、それでもなんだか感動的な夜の風景を眺めながら市内を走り抜ける。まるで映画のシーンのよう。ああ、憧れのキューバにやっと来れたんだな、と一人でノスタルジーに耽る。もっと暑いのかと覚悟していたのに、顔に当たるそよ風が気持ちよい。これで臭くなければ最高なのに...。ハバナ大学のすぐそばの宿に到着して、クタクタだったので空腹を忘れすぐに眠りについた。

翌朝、朝食を頼んでいたので9時くらいに起きる。入り口の大きな居間、バルコニーが素敵で天井がやたらに高い。綺麗に掃除されてあり、クーラーと扇風機もついている宿だった。猫が3匹。1泊が25セウセ(2つのベッド)と20セウセ(一人用)。こういう民家を宿で貸すのがキューバではほとんどなのだ。この宿も行く前に、キューバに精通しているBさん(名古屋のベーシスト)に紹介していただいた。







朝食はカットフルーツ(マンゴ、パパイア、パイナップルだったがブラジルほど美味しくはない)にパン、バター、目玉焼き、ハム&チーズにコーヒー。これで4セウセ。

1セウセが120円くらい。しかもややこしいことに、キューバ人たちが普段使用するお金はキューバペソ(モネダ)といって1CPが4円くらい。この2種類のお金があって慣れるまでは大変。要するに観光客は全てセウセを使用しろ、ということなのだ。

タクシーもいろいろなものがある。黄色に黒い線の入ったタクシーがいわゆる普通の観光客などを乗せるもの。よく映画などで見かけるクラシックなアメリカ車にも2種類あって、おんぼろでたくさん人を載せているものが「乗り合いタクシー(マキナと呼ばれる)」。ピカピカで美しいアメ車で観光客を乗せるものは結局一度も乗らなかったが、結構高い値段で観光案内するためのもの。普通のタクシーでも日本人を見ればだいたい「10セウセ!」と最初に言われる。乗る前に値段の交渉が大事になってくる。これをまともに使っていたら毎回1000円以上払うことになるので交通費だけでもバカにならない。

値切って8セウセで何度か利用していくうちに、乗り合いタクシー(マキナ)が一人20~30ペソ(80~120円)、ということがわかり唖然。なんだなんだ、この金額の違いは。ただし、マキナは走るルートが決められているので、その区間だけしか乗れないので道をよく知らないとやはり利用するのは難しい。

高いタクシーをやめ、宿から旧市街(ハバナビエハ)へ散歩がてらてくてくと歩いていくことにする。こうしてハバナでは(1万〜1万五千歩くらい)よく歩いた。















夜はJazz Cafeというライブハウスに行く。アレハンドロ・ファルコンというピアニストのトリオ。ピアノはこの店にはなく、ローランドのエレピを弾いていたが、エレクトリックベースとドラムの息のあった演奏。素晴らしいテクニックとテンションでキューバ初日のライブですごいものを聞いてしまった、とただただ感動。素晴らしいピアニストだった。キューバのピアノといえばチューチョ・バルデスかロランド・ルナしか知らなかったがこんなレベルのミュージシャンがゴロゴロしているのだろうか。

Jazz Cafeの入り口



Jazz Cafeは入場料10セウセを払えば、あとはその分何を食べても飲んでもよいというシステム。ハンバーガーやビール、コーヒーなど頼んでもおつりがくる。これは安い!と喜んだが、それでもここには観光客しかこない。キューバの人にとっては10セウセは大金なのだ。(つづく)
































凱旋ライブ@新宿Pit Inn

2016年12月23日 | ライブとミュージシャンたち
キューバ帰国して翌日、23日は昼間からPit Innのライブでした。

お越しくださったみなさま、本当に本当にありがとうございます。これで年内のライブは終了しましたが、手首の治療に専念して来年も元気に迎えたいと思います。

ファルコンgと渡辺庸介perの若手ミュージシャンを迎えての初めてのTReS。キューバに行っていたのでリハーサルもできない状態のまま・・・難しいオリジナルばかりを無謀にも演奏してもらいました。

それでも初めてとは思えない、彼らのセンスのよさには感服です。今までとは違うTReSになったね。といろいろな方から声をかけていただきました。

 ファルコンg

渡辺庸介per



キューバでいろいろなことを感じてきたもの。少しづつ形にしていきたいと思っております。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

キューバではネット状態が悪く、FBとツイッターには少し書いておりましたが、ここには書けずにいました。

これから写真や動画とともに少しづつ公開しますのでお楽しみに。

素敵なクリスマスを!!!

写真提供/田尾龍二氏、大隈孝之氏(トップ)