代理人が、本人の利益のためではなく、自己または第三者の利益のために代理権の範囲内の代理行為を行った場合に、その法律効果はどうなるか。典型的な事例としては、土地の売却の依頼を受けた代理人が、売却代金を持ち逃げしてしまう意図で代理行為を行うような場面が想定されるであろう。
判例上は、取引の相手方が、代理人の権限濫用を知っているかあるいは知りうる場合には、民法93条但書きを類推適用するという考え方である。そして、会社の代表者が権限を濫用して代表者個人の利益のために行った場合でも全く同じ法理を使う。
これに対しては、相手方の軽過失の場合も無効とされてしまうことになり、取引の安全を害するのではないかという学説からの反対意見があったやに思う。事実上相手方に権限濫用がないかどうかの調査義務が課されてしまう可能性を問題としているのであろう。こうした学説は、結論的には悪意、重過失ある相手方との関係で無効を主張できるとすればよいとしていたと思われる。
以上の現行法及び判例・学説に対し、今回の債権法改正仮案では代理権濫用行為に対して明文でメスを入れることとなった。その内容は、相手方が代理人の権限濫用の目的を知り、または知ることができたときは、無権代理行為とみなすという明文規定を設けるというのである。
この仮案の内容は、要件はこれまでの判例と事実上同様であるが、効果は無効ではなく無権代理行為に変更するということを意味すると思われる。
判例上は、取引の相手方が、代理人の権限濫用を知っているかあるいは知りうる場合には、民法93条但書きを類推適用するという考え方である。そして、会社の代表者が権限を濫用して代表者個人の利益のために行った場合でも全く同じ法理を使う。
これに対しては、相手方の軽過失の場合も無効とされてしまうことになり、取引の安全を害するのではないかという学説からの反対意見があったやに思う。事実上相手方に権限濫用がないかどうかの調査義務が課されてしまう可能性を問題としているのであろう。こうした学説は、結論的には悪意、重過失ある相手方との関係で無効を主張できるとすればよいとしていたと思われる。
以上の現行法及び判例・学説に対し、今回の債権法改正仮案では代理権濫用行為に対して明文でメスを入れることとなった。その内容は、相手方が代理人の権限濫用の目的を知り、または知ることができたときは、無権代理行為とみなすという明文規定を設けるというのである。
この仮案の内容は、要件はこれまでの判例と事実上同様であるが、効果は無効ではなく無権代理行為に変更するということを意味すると思われる。