実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-代理人の利益相反取引(2)

2014-11-05 09:54:00 | 民法総則
 このように、改正仮案によれば、利益相反行為一般が無権代理行為とみなされることとなるが、本人が予め許諾した行為については代理権を認める但し書きも存在する。この但し書きの適用場面がどのように運用されるのだろうか。

 例えば、債務者の債務を保証することをその内容如何に関わらず予め許諾していた場合にどうか。一般的にこの種の許諾に但し書きの適用を認めると、およそ本文の適用場面はなくなってしまいそうである。本文は、たとえ一般的には代理権を与えていたとしても、利益相反行為に該当すれば無権代理とみなすのであるから、ただ単に保証人になることに関する代理権を与えたというにすぎない場合に、但し書きの適用を認めるわけにはいかないはずである。
 そうだとすると、主債務の内容を理解していること、及び保障の範囲も理解していること、その上で許諾したような場合だけが、予め許諾した行為というべきであろう。典型的には、債務者が金銭の借入をするに当たって、その借用証及び連帯保証契約書を、保証人となろうとする者が現実に見て、それで納得して代理権を与えるような場合である。
 ただ、そうだとすれば、はじめから保証人になろうとする本人が、見せられた連帯保証契約書に自ら署名すればよいだけであり、わざわざ署名代理による必要性がなさそうである。

 また、保証契約に限っていえば、保証契約に関して代理権を授与するには、保証契約の書面行為性との関係で、本人の保証意思も委任状等の書面ではっきりさせるべきであろうし、その場合の但し書きの適用を考えると、結局、委任状には連帯保証契約書と同じ文言が記載されたものである必要がありそうである。そうであれば、なおさら連帯保証契約書そのものに自らが署名した方が手っ取り早い。
 以上のように考えると、本来は保証人となろうとする者が連帯保証契約書に署名するのが本来の姿であり、債務者による代理行為プラス但し書きの適用ということによる代理行為の有効性を認めるのは慎重であるべきだろう。