実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

改正会社法-子会社等、親会社等(4)

2014-09-09 12:45:05 | 会社法
 では、「子会社等」、「親会社等」の定義は、実際にどこで使われるか。実は、これらの定義が使われている場所は、社外取締役、社外監査役の定義と、公開会社における募集株式、募集新株予約権の割当ての特則の場面だけである。そのため、親子関係の規律そのものは従来通り「親会社」「子会社」の定義で把握しておけばよいことになる。

 改正法における社外取締役、社外監査役は、以前にもこのブログで述べたように、親会社関係者も社外性から除外されることになったが、その根拠として「親会社等」が使用される。「親会社等」の取締役、執行役その他の使用人が社外性から除外され、「親会社等」が自然人である場合は、当該自然人も除外されるのである。さらにいえば、親会社関係者の配偶者や二親等内の親族も除外される。
 また、「親会社等」の「子会社等」の関係者も社外性から除外され、ここに「子会社等」が使われる。『「親会社等」の「子会社等」』であるから、問題となる会社から見れば、兄弟会社になる。兄弟会社を定義する場面で「親会社等」と「子会社等」が使われているのである。

 以上が、「子会社等」、「親会社等」が使用される第1場面である。

改正会社法-子会社等、親会社等(3)

2014-09-04 12:43:20 | 会社法
 そこへ持ってきて、今回の会社法の改正で、「子会社等」、「親会社等」という概念を別に定義することになったので、ますます複雑な状況が生じている。

 「子会社」の「親」は、既に述べたように会社であることが前提であるが、改正法によれば、「子会社等」の「親」は、会社以外の法人が想定されているようである。具体的な法人は、法務省令で規定されることになる。ただし、そうなってくると、「子会社」が組合等の会社以外の事業体で、その「親」が会社以外の法人ということもあり得ることになる。こうなると、一見すると会社法の問題ではなくなってしまうようである。しかし、後で述べるように、「子会社等」の適用される場面が親子関係そのものの規律の場面ではないので、この場合でも、「子会社等」とその「親」として把握しておく必要があるのかもしれない。

 また、「親会社」の定義では、既に述べたように「親会社」そのものは組合その他の事業体であることが前提であったが、「親会社等」は、法人以外の者が想定されているようである。具体的には法務省令で規定されることになるが、「親会社等」には、法人格のない団体だけではなく、自然人が含まれる。
 いずれにしても、「子会社等」および「親会社等」の省令の定義でどのように規定されるのか、注目である。

改正会社法-子会社等、親会社等(2)

2014-09-01 09:51:42 | 会社法
 最初に、「子会社」、「親会社」の定義の対象となる者が誰かをもう一度見直してみる。
 通常は双方ともが株式会社であることを念頭に置くと思うが、会社法上の定義では必ずしもそうではない。その上、会社法の定義規定は非常に分かりにくく(特に、「子会社」の定義に関しては、そもそも日本語として正しい日本語かどうかすら怪しい)、さらには、詳細は会社法施行規則を見なければならない。

 まず、「子会社」の定義であるが、ものの本によると、「子会社」における「親」に当たる者は、会社であればよく、株式会社である必要はない。また「子会社」そのものは、会社だけではなく、組合その他の事業体であればよいようである。そのため、例えば「子会社」が組合であり、その「親」が持分会社であるといったことも想定されるようなのである。

 同様に、「親会社」の定義であるが、その「子供」に当たる者は、株式会社でなければならないが、「親会社」そのものは、会社だけでなく、組合その他の事業体であればよいようである。
 以上の結果、「子会社」の定義における「親」と「親会社」の定義とは、必ずしも一致せず、同様に「親会社」の定義における「子供」と「子会社」の定義とは、必ずしも一致しない。このように、非常に複雑な状況となっている。