実務家弁護士の法解釈のギモン

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改正会社法-支配権の異動を伴う増資(3)

2014-09-26 10:18:38 | 会社法
 運用上注意すべき点として、まず、特定引受人に関する株主に対する通知または公告を行うべき時期は、公開会社が取締役会決議限りで募集株式の発行を行う場合に一般的に要求される、発行事項の通知・公告と、手続及び時期が同じである。ところが、この発行事項の通知・公告と、特定引受人に関する事項の通知・公告との関連が、改正法の条文からは全く覗えない。そうすると、それぞれの通知・公告について別々に行わなければならないのかが問題となりそうである。しかし、おそらくは同一の通知・公告内容中に、発行事項と特定引受人に関する事項の双方を記載して一度に済ませることは可能なのであろう。
 もっとも、この点については有価証券届出書で対応すべき場合であれば、どちらの通知・公告も必要なくなるので、その場合に限ってはあまり問題はない。上場会社が募集株式を発行する場合のの多くは有価証券届出書での対応となろう。

 次に、もし総株主の議決権の10分の1以上の株主の反対があった場合、株主総会を開催しないと募集株式の発行ができないことになるが、反対の株主数が10分の1以上かどうかは、通知・公告の日から2週間以内での判断になる。そうなると、直ちに株主総会を開催してその承認を得ないと、予定通りの募集株式の発行はできないことになるが、全員出席総会のような形が取れない限り、株主総会を直ちに開催することなど事実上も法的にも不可能である。上場会社では、非常にシビアな問題のはずである。