道垣内教授が指摘するまでもなく,民法343条は,まさしく質権実行により目的物が第三者に移転する(あるいはそれと同視しうる状況になる)結果となるから,譲渡できない物を質権とすることを認めないのである。譲渡が禁止されている動産や不動産の質権,あるいは債権であれば扶養請求権のような債権の質権を想定すれば,このことは明らかである。つまり,効果面からの帰納的な理由に基づく。質権の実行ができない,あるいは質権実行を認めるべきではない目的物だから,質権の目的にもできないのである。
しかし,譲渡禁止特約付債権の場合は,実行可能か否かという効果面よりも先に質権設定の可否そのものが論じられなければならないと思っている。仮に質権設定を認めたならば,取立権の行使であろうと,民事執行法に基づく担保権の実行であろうと,実行は可能だと,演繹的に解すべきなのである。つまりは,譲渡禁止特約付債権は,民法343条の問題とは考えるべきではないと思うのである。
もし,効果面の理由で譲渡禁止特約付債権の質権設定を不可とするならば,例えば,譲渡禁止特約付の賃料債権を,賃貸目的物に抵当権を設定している抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえたり,担保不動産収益執行により賃料債権から優先弁済を受けたりすることはできないのであろうか。似たようなことは,譲渡禁止特約付債権に対して先取特権の成立が問題となるような場合も想定できる。先取特権は成立しないのだろうか。
私は,こうした考えはおかしいと思う。やはり,債務名義による差押えが可能であるのと同様に,譲渡禁止特約付債権に対する担保権の実行は可能というべきなのである。
もともと,民法466条2項の趣旨そのものも,債務者の保護の一点にあり,債権者が誰であるかについての,債務者にとっての債務管理の便宜のためでしかなく,それ以上でも以下でもない。しかも,譲受人が善意であれば結局譲渡は有効となってしまうのである。このように,譲渡禁止特約の効力を,たとえ物権的効力といってみたとしても,扶養請求権のような強い政策的考慮をもった債権譲渡禁止ではないし,今回の判例に従えば,せいぜい相対的な無効でしかないのである。
以上のように,譲渡禁止特約のある債権であっても,判例通説上,債務名義による強制執行は可能なのであるから,担保権の実行としての差押えが不可という直接の理由はないはずである。かつ,譲渡禁止特約と同じような規定として質権設定禁止特約のような特別の規定もない以上,譲渡禁止特約付債権も質権設定が可能だと考えるべきだと思うのである。
しかし,譲渡禁止特約付債権の場合は,実行可能か否かという効果面よりも先に質権設定の可否そのものが論じられなければならないと思っている。仮に質権設定を認めたならば,取立権の行使であろうと,民事執行法に基づく担保権の実行であろうと,実行は可能だと,演繹的に解すべきなのである。つまりは,譲渡禁止特約付債権は,民法343条の問題とは考えるべきではないと思うのである。
もし,効果面の理由で譲渡禁止特約付債権の質権設定を不可とするならば,例えば,譲渡禁止特約付の賃料債権を,賃貸目的物に抵当権を設定している抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえたり,担保不動産収益執行により賃料債権から優先弁済を受けたりすることはできないのであろうか。似たようなことは,譲渡禁止特約付債権に対して先取特権の成立が問題となるような場合も想定できる。先取特権は成立しないのだろうか。
私は,こうした考えはおかしいと思う。やはり,債務名義による差押えが可能であるのと同様に,譲渡禁止特約付債権に対する担保権の実行は可能というべきなのである。
もともと,民法466条2項の趣旨そのものも,債務者の保護の一点にあり,債権者が誰であるかについての,債務者にとっての債務管理の便宜のためでしかなく,それ以上でも以下でもない。しかも,譲受人が善意であれば結局譲渡は有効となってしまうのである。このように,譲渡禁止特約の効力を,たとえ物権的効力といってみたとしても,扶養請求権のような強い政策的考慮をもった債権譲渡禁止ではないし,今回の判例に従えば,せいぜい相対的な無効でしかないのである。
以上のように,譲渡禁止特約のある債権であっても,判例通説上,債務名義による強制執行は可能なのであるから,担保権の実行としての差押えが不可という直接の理由はないはずである。かつ,譲渡禁止特約と同じような規定として質権設定禁止特約のような特別の規定もない以上,譲渡禁止特約付債権も質権設定が可能だと考えるべきだと思うのである。