実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

決算広告の不備と法人格否認の法理(1)

2010-09-24 15:38:40 | 会社法
 平成17年の会社法改正の際,中小企業の決算公告(計算書類の公告)をどうするかが議論になったやに聞いている。すなわち,中小企業においても決算公告は義務とされているはずであるが,実際に決算公告をしている中小企業などほとんど存在しないので,中小企業の決算公告義務を免除するかどうかが問題とされたが,ウェブサイトを利用した電子公告によって,安価に容易に公告できるようになっている現状を踏まえて,決算公告義務の例外を認めなかったと理解している。
 それでは,会社法改正のこうした建前を踏まえて,中小企業が決算公告をするようになっているかといえば,現状ではおそらく,決してそのようなことはないと思われ,相変わらず決算公告をしている中小企業など,ほとんどないというのが,私の現状認識である。

 なぜこのような現象が起きるかというと,法技術的な側面で説明すれば,決算公告をしないことによるペナルティが全くと言っていいほど存在しないからである。
 法律上は,会社法976条2号により,過料に書せられる可能性は残されてはいるが,決算公告をしなかったことによりこの条文が適用されたという話を,私は聞いたことがないし,そもそも同条によるペナルティーは,それほど大きいペナルティーではないともいえる。