実務家弁護士の法解釈のギモン

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株主総会決議取消訴訟を提起してみた(5)

2019-03-20 13:04:40 | 会社法
 すぐに気づくと思うのだが、例え飲食が取引先・業界関係者との飲食であったとしても、それが仕事か遊びかは、かなり主観的な判断に陥りがちな事柄である。当然、その飲食の時間が短ければ仕事で長ければ遊びというような基準があるわけでもなければ、飲食の場がキャバクラなら遊びで、そうでなければ仕事だなどという基準があるわけでもない。それを、原告立証責任の下で遊びか仕事かの判断を裁判所に行わせようというのである。それで本当に適切な判断ができるだろうか。

 そもそも、株主総会決議の内容が著しく不当か否かは、本来誰が決めるべき事柄かといえば、もちろん株主自身が株主総会において決めるべきことである。決議内容が不当だと思えば、否決をすればよい。つまり、決議内容が不当か否かは、本来は株主に全面的に任されていることなのである。なので、判例的にいうと、例えば合併比率について、著しく不当のように見えても、そのことのみをもって決議の瑕疵とは考えない。第三者の目から見て、首をかしげたくなるような合併比率だとしても、決議に加わった株主の3分の2以上の株主がよしとするならば、他人が口を出す事柄ではないという理解である。しかし、例えば吸収合併消滅会社となる子会社の株主総会決議に、吸収合併存続会社となるべき親会社が加わっているからこそ、株主の意思だけに任せられない問題となるのである。
 逆に、合併比率等の合併契約の内容の当否について第三者として意見が分かれそうな程度の問題だったとしても、親会社以外の株主の多くが合併に反対していたとすれば、そこには株主だからこそ見える、第三者には見えない何かがあるから親会社以外の多くの株主が反対しているともいえる。そのような場合に、裁判所として、決議内容が著しく不当であることの証明がないとして、決議取消を認めないという判断は、正しいのだろうか。

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