実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

成年後見制度の問題点(1)

2010-11-10 09:59:27 | 民法総則
 法改正がなされてから早くも9年(施行後8年)が経過することに、いまさらなが驚きを感じている。法改正当時、本当にそれでよいのか、漠然とした不安を感じていた法改正であった。それが今、セカンドオピニオン的な仕事の中で、間接的に問題となってきた。そして、いざ具体的に事件として間接的にでも接し、処理することを迫られると、教科書などでは問題点として指摘されていないような問題点に気づくものである。
 今まさに間接的な事件処理としてその問題に遭遇しているのが、見出しに書いた、成年後見制度である。

 成年後見制度の法改正時に、漠然としてではあるが問題点がありそうだと思っていたのは、後見登記の問題である。
 法改正以前は、禁治産、準禁治産の宣告がなされると、その宣告は戸籍に記載された。それが個人情報の問題に絡んだのであろうか、戸籍ではなく、新たに後見登記制度が新設され、後見開始決定や保佐開始決定がなされても、その旨が戸籍には記載されず、新たに創設された登記に記載されることとなったのである。しかも、その登記事項証明書は自己のものまたは4親等内の親族しか取り寄せができない。

 ちなみに、「成年後見登記等に関する法律」の10条の柱書だけをみると、何人も登記事項証明書の交付を請求できるかの如くに読めるが、1号から4号までをよく見ると、そうではないことが明らかであり、要するに、自己情報、あるいは配偶者または四親等内の登記事項証明書しか交付請求できないのである。非常に不親切、不適切な(あるいはわかりにくい、さらに言えばごまかしともいえる)立法技術である。

コメントを投稿