実務家弁護士の法解釈のギモン

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裁判上の担保の法的性質と権利行使方法(3)

2013-05-24 09:54:08 | 最新判例
 実は、現行民事訴訟法は平成8年に全面改正となっているが、改正前の旧民事訴訟法113条では、「供託したる金銭……の上に質権者と同一の権利を有する」と規定されていた。このような規定ぶりだと、供託金還付請求権は債権質と見ざるを得ない可能性が高くなり、会社更生法上は更生担保権としか解釈し得ない可能性が高くなる。ところが、現行民事訴訟法77条は、単に「他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。」と規定するのみで、意識的に質権構成を除外しているといえるのである。
 しかし、では現行法上、供託金還付請求権を行使することによる優先弁済が受けられることの法的性質についてどうなのかというと、教科書レベルではよく分からないし、これまでこの点が問題となることがおそらくなかったであろうから、意識する必要もなかったのであろう。
 これを会社更生法上は203条2項の「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」の問題として判示したということは、裁判上の担保として供託した場合の供託金還付請求権の法的性質を、国が被供託者に対して保証類似の債務を負担したという趣旨に理解することになるのだと思われる。
 ちなみに、裁判上の担保を提供する方法として、供託のほかに、金融機関との間で支払保証委託契約を締結する方法もあるが、この場合も、金融機関が保証債務類似の債務を負担したと解釈することになるのであろう。

 さて、つぎの問題は、では、この供託金還付請求権は、どのようにして権利行使できるのであろうか。実は、この点についても上記最高裁は一定の判示をしており、私はむしろそちらに興味がある。

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