実務家弁護士の法解釈のギモン

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「各自」の意味(5)

2012-11-19 09:59:02 | その他の法律
 「各自」という言葉を使い出した歴史的な経緯を知るわけではないが、そもそも、連帯債務であろうと、連帯保証債務であろうと、そして合計で500万円が支払われればそれでよい債務だとしても、債務を負った時点では、それぞれの債務者が皆独自に500万円の債務を負担しているのである。そして、このことは普通の保証債務でも変わらない。つまり、連帯債務者も連帯保証債務者も普通の保証債務者も、国語的意味において、文字通り「各自」500万円の債務を負担しているのである。だからこそ、「各自金500万円を支払え」という、文字通り国語的意味における請求の趣旨になるのではないのだろうか。「連帯関係」があるからではないのではないだろうか。それを、のちの法律実務家が、勝手に「連帯して」と同義と誤解してしまっているように思えるのだが、違うだろうか。

 そうだとした場合、被告2名に対し500万円ずつ合計で1000万円の支払を求める訴訟であっても、被告2名が国語的意味において「各自」500万円の債務を負っていることになるのだから、やはり「各自」の支払いを求めて、決しておかしくない。それを勝手に「『各自』は『連帯して』と同義だから」という根拠で「各自」はおかしいということこそ、おかしいのである。
 そして、一人が支払えば他方の債務も消滅するかどうかは、その債務の履行後の性質に関する事柄にすぎず、訴えを提起する段階で国語的意味において各自が500万円の債務を負担するのであれば、連帯債務であろうとなかろうと、保証債務であろうとなかろうと同じなのである。そして、訴訟物が連帯債務や連帯保証債務、単純な保証債務の履行請求権であれば、口頭弁論終結後に債務者の一人が当該債務を支払えば、他方の債務も消滅することは、「各自」という言葉如何に関わらず債務の実体法的属性として当然なのであって、訴訟法的には他の債務者にとっても請求異議事由になるにすぎないということである。このことは、言葉の問題ではなく理屈の問題であるい。

 だから、「各自」という言葉は、法的意味も国語的意味でも同じと考えてしかるべきだと思っている。私は、弁護士成り立てのことから今日まで、ずっと以上のように考えている。
 私の考えはおかしいだろうか。

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