実務家弁護士の法解釈のギモン

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手形学説ー実務から見る創造説のおかしさ(1)

2018-08-22 11:50:57 | その他の法律
 学生時代から司法試験受験時代にかけて手形法を勉強し、創造説あるいは二段階行為説と呼ばれる考え方に触れたとき、すごい考え方があるものだと関心したものである。

 債権債務の発生原因は、民法上の普通の考えで言えば、事務管理、不当利得、不法行為に該当しない限り、契約によるしかない。それが債権各論の基本的考え方である。あとは、個別の条文において法定責任的な債権債務発生規定があったりするだけだである。なので、手形債権の発生原因も受取人という相手方がいる限り、振出人と受取人間の契約と考えるのが自然である。手形を交付する契約で発生すると考えれば、交付契約説となる。
 これに対し、創造説は、振出人が手形を作成するだけで手形上の債権債務が発生するというのである。そして、振出人が手形を作成しただけの段階での手形権利者が誰かというと、振出人本人だというのである。あとは、振出人に帰属している手形権利を受取人に交付譲渡することによって移転させるだけであり、この手形権利移転行為は契約だという。
 手形が有価証券であり、有価証券は、いわば権利が証券に結合した状態であるというように考えると、手形を作成すれば、そこに手形上の権利は表章されるわけであり、手形を作成するだけでその手形という紙切れに結合されるべき権利が発生すると考えても良さそうな気がするのは確かである。

 学生時代から司法試験受験時代にかけて創造説の本で勉強したこともあり、そのころは創造説が正しいに決まっていると思っていた。