実務家弁護士の法解釈のギモン

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理解不能な欠損填補責任(4)

2018-08-01 13:30:07 | 会社法
 以上を前提に465条1項の第一括弧書きと照らし合わせれば、その括弧書きは、当期が4月1日から6月末日頃の計算書類を確定させるまでの時期のことを言っていることが分かる。つまり、この時期は、直前の事業年度(前期)は、計算書類が確定していない以上、いまだ最終事業年度ではないのである。なので、この時期に配当等をした場合は、当期の計算書類で欠損が生じたかどうかではなく、前期の計算書類で欠損が生じたか否かで考えよと言っているのである。前期の計算書類は、配当等をした後に確定されることが理由なのかもしれない。
 そして、このことは、分配可能額を最終事業年度末日の計算書類から計算していくこととも、一見整合性がありそうにも感じる。
 4月1日から前期の計算書類を確定させるまでの期間に配当等をしようとする場合、分配可能額の計算の出発点である最終事業年度は、前期ではなく前々期になるので、前々期の計算書類で分配可能額を計算することになるからであり、そうだとすれば、その後欠損が生じたかどうかを判断するのは、前々期の次の期であり、未だ確定していない前期の計算書類で考えよというのである。

 結果的に、欠損填補責任の発生期間は、計算書類確定時から次の確定時までの期間で考えようということになるのである。
 いかにも理屈っぽいといえそうである。