実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

会社法改正案-旧株主による代表訴訟(1)

2014-02-24 13:14:18 | 会社法
 今回の会社法の改正案では、株主代表訴訟の制度が拡充される。

 一つは、多重代表訴訟の新設といわれているが、完全親会社の株主が完全子会社の役員の責任追及ができるようになる仕組みである。これについては、既に要綱案の段階の内容についてこのブログにコメントをしており、改正案を見ても、基本的にそのコメントに付け加えることはないので、そちらを参照して頂きたい。

 もう一つは、目立たない改正であるが、株式交換・株式移転等により当該会社の株主でなくなっても、その完全親会社の株式が交付される場合は、一定の範囲で完全子会社の役員の責任追及ができる、というものである。改正案847条の2である。条文の見出しでは、「旧株主による責任追及等の訴え」という見出しになっている。
 この仕組みは、一見、完全親会社株主が完全子会社役員の責任を追及しようというのであるから、多重代表訴訟があれば問題がなさそうでもある。それにもかかわらず、完全親会社株主が完全子会社役員の責任を追及する多重代表訴訟とは別に規定したのはなぜか。