実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社法改正案-差止請求(2)

2014-02-10 10:39:51 | 会社法
 ところで、会社法上の差止請求とは、一体何であろう。
 といっても、こういう疑問を提示すること自体、あまりにも漠然としすぎているかもしれない。

 例えば、募集株式発行差止請求で考えて見る。これは実体法上の権利なので、裁判外で行使しても構わないと言われる。ところが、任意に差止請求をしても会社がこれを無視してしまうこともあるので、仮処分等で行使することが考えられるとされる。これはどういうことかというと、任意に差止請求は無視されてしまうと何の意味も持たないことを当然の前提としている。
 では、差止仮処分が無視されて募集株式が発行されてしまった場合はどうか。判例はさすがに無効原因だというが、学説上はその場合でさえ直ちに無効原因にならないという説も有力なのである。
 それではさらに、仮処分ではなく、本案訴訟で差止判決がなされたらどうなのか。差止判決を無視して募集株式が発行されてしまった場合どうなのかは、少なくとも教科書レベルではなにも書かれていないのではないだろうか。このあたりのことは、以前にもこのブログで述べたことがあるかもしれない。

 結局、何が言いたいかというと、いくら差止請求が認められると言ってみても、差止請求が無視された場合の効果がどうなっているのか、これを考えないことには何のための差止請求なのかが分からないのではないか。
 これが、私の疑問なのである。