実務家弁護士の法解釈のギモン

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区画整理事業と賦課金(後編3)

2013-06-25 09:52:40 | 時事
 こうした問題は、区画整理における賦課金の問題に限ったことではない。

 例えば、土地や建物に対して課税される固定資産税の納税義務者は、1月1日現在の登記上の名義人に課税される。これは地方税法で決まっている。そのため、不動産の売買が年末ぎりぎりに行われ、登記が1月1日に間に合わないような場合、固定資産税は1月1日現在の登記名義人に課税される以上、売主に課税されるということになる。しかし、実体は登記手続が間に合わないと言うだけのことであって、真の所有者は買主に既に移転しているのである。それでも法律上は売主に対して固定資産税が賦課される。
 この場合に、売主から買主に対して賦課された固定資産税相当額の返還を求めることができるかどうかは、地方税法には何も規定していない。
 しかし、なぜ登記名義人が納税義務者となっているかを考えると、それは単に課税庁の便宜のためでしかないことは、容易に理解できるはずである。つまり、登記名義人が真の所有者ではないことは時々生じることであるが、課税庁として真の所有者を探索することは容易ではない。そのため、登記名義人を納税義務者としているにすぎないのである。
 そうだとすれば、固定資産税が賦課された登記名義人から真の所有者に対して課税相当額の返還を求めることができると考えるべきであることは、当然であろうと思うのである。

 同じようなことが、区画整理事業の賦課金に関しても言えるはずである。つまり、賦課金とは区画整理事業の経費に当たる費用であるから、その事業によって利益を受ける者が負担すべきは当然なはずである。そして、仮換地中であっても整備済の土地として売却できれば、区画整理事業による利益は売却したもと所有者にすべて帰属しているはずである。しかし、区画整理事業中に土地所有者が変更した場合に、誰が区画整理事業による利益を得ているかを区画整理組合が探索することは必ずしも容易ではない。そのため、一律に賦課時の区画整理組合の組合員(すなわち賦課時の土地所有者)に賦課する仕組みを採用しているに過ぎないと言えそうなのである。