実務家弁護士の法解釈のギモン

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選挙無効判決(3)

2013-04-02 09:39:03 | 民法総則
 さらに改めて選挙無効判決がなされて気づく問題は、当該選挙で当選した議員にとっては、自らの議員としての地位の問題であるにもかかわらず、自分自身は選挙無効訴訟へ関与することのないまま無効とされ、議員としての地位を失うことになってしまうことである。これも、実際に無効判決が出てみて改めて気づく点である。もちろん、選挙無効訴訟の構造がそういう構造だから致し方ないのであるが、一票の格差の問題が発生していない選挙区について、訴えの利益を認めて選挙を無効とし、議員資格を奪うような結論が、本当に妥当なのかどうか、改めて考え直してみる必要はないのだろうか。

 今朝の新聞報道では、次回の参議院選挙では、全選挙区選挙で選挙無効訴訟を提起するとの報道もある。そうなると、当然に一票の価値が高い選挙区でも選挙無効訴訟を提起することを意味するはずである。一票の価値の不平等の問題とは、一票の価値が低いことが問題とされているわけであって、一票の価値が高い選挙区はどのように考えるのだろうか。

 いずれにしても、今回の広島高裁判決やその岡山支部判決は上告されるであろうから、おそらくその判決が確定するわけではなく、最高裁で改めて判断が示されることになるはずであり、無効とされる判断が最高裁でも維持されるかどうかはかなり微妙な気はする。
 しかし、今回の高裁判決が憲法の教科書の書き換えが必要と思われるような画期的な判決であることは間違いがないであろう。そして、これを機会にさらに議論が深まることを期待するところである。