実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

公務員の政治活動の自由(1)

2012-12-11 17:28:34 | 最新判例
 既にマスコミなどでも取り上げられているが、公務員の政治活動の自由について、非常に重要な判例が登場した。

 憲法判例として有名な猿払事件判決以降、判例の理解としては、国家公務員法やその委任を受けた人事院規則に規定する公務員の政治活動の禁止は、一律禁止であるかの如くの理解が普通であった。
 ところが、今般の判例は、禁止の対象とされるものは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られるという限定解釈をした上で、特定の政治色を有する政党新聞の配布行為について、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえないとして、非裁量的公務を行っているに過ぎない公務員の新聞配布行為について、無罪とした原審の判断を維持した。

 他方で、同時に言い渡された別の判決では、管理職的地位にある者がほぼ同一の行為を行った事案に関しては、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるとして、有罪とした原審の判断を維持した。
 有罪と無罪が別れた原因は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるか否かの判断にあるといえるが、一方は裁量の余地のない公務員については無罪、裁量の余地のある管理職公務員については有罪としている点が、判断の実質的な分かれ目だったといえそうである。

 ただ、いずれにしても、公務員の政治活動が一律禁止されるかのような規定について、その政治活動の範囲を限定して理解し、無罪とした事案が登場したことは、憲法判例としての重要性が認められそうである。