実務家弁護士の法解釈のギモン

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動産譲渡登記は利用価値がない?(3)

2010-10-19 10:09:48 | その他の法律
 特例法は,表面的には法人による債権譲渡と同様に,登記の対象となる動産の譲渡に基本的に制限はないので,一見するとあたかも法人の動産譲渡一般に対抗要件としての登記が利用できるかの如くに見える法律となっているのだが,事柄の性質上,現実の引き渡しがなされる世の中の大多数の動産の取引には必要ない制度なのである。
 しかし,そうであるならば,はじめから動産の非占有担保のための対抗要件の特例の登記,すなわち動産抵当として制度化した方が,むしろすっきりしたのではなかろうか。

 現在法務省で検討が行われている債権法改正において,債権譲渡は登記に一本化することが検討事項の一つとなっているようである。その趣旨は,おそらく債権譲渡の対抗要件を現在のように「通知承諾」と「登記」との二本立てとなって混乱しやすくなっている現状から,登記に一本化することによって,混乱を避けることが目的となっているのだろうと思われる。
 その立法の当否はともかく,仮に債権譲渡の対抗要件が登記に一本化されるとなると,当然その規定は民法典に置かざるを得ない(ただし,不動産登記法と同様に,登記手続に関する「債権登記法」という法律は別途必要であろう)。そうなると,動産譲渡登記だけが置き去りになってしまうのである。
 債権法を改正するという建前だから,債権譲渡の対抗要件制度の一本化ということだけがクローズアップされているが,そうであれば,動産譲渡についても,同様の趣旨として対抗要件制度の一本化(あるいは少なくとも対抗要件制度の再設計)は必要なのではないだろうか。ちなみに,債権法の改正において,この点はどのように考えられているのか,私は全く知らない。

 そして,債権譲渡と違い,動産譲渡を登記に一本化することが事柄の性質上およそ不可能である以上,債権法改正に併せて,改めて動産譲渡登記は動産抵当制度として再設計するのが望ましいような気がするのだが……。
 このように考えるのは,私だけであろうか。