実務家弁護士の法解釈のギモン

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条件?期限?

2010-07-23 13:12:16 | 最新判例
 7月20日に比較的ユニーク(?)な最高裁判例が出た。最高裁判所のホームページ掲載の裁判要旨によれば,
      請負人の製造した目的物がユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して
     請負契約が締結された場合において,注文書に「ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払」等の記
     載があったとしても,上記請負契約は上記リース契約の締結を停止条件とするものとはいえず,上記リ
     ース契約が締結されないことになった時点で請負代金の支払期限が到来するとされた事例
というものである。
 判決文を読んでも,かなり事例判決的側面が強く,この判例に何らかの法理があるとはいいにくいという見方もありえるだろう。
 しかし,私は,上記裁判要旨を見た限りでも,一定の法則が見いだせるような気がしている。

 事案として問題なのは,注文書に「ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払」等の記載があった場合に,この記載が条件なのか(不確定)期限なのかが問題となった判例だと言えると思う。
 そのように見ると,上記判例は,いわゆる出世払い契約が条件か期限かが問題となった有名な判例と,事案は違えども,よく似た判例だということが言えそうである。そして,両判例とも,当該事案に関し,(不確定)期限と判断した判例なのである。

 これら判例には,共通点が見いだせるのではないかと思っている。仮に条件だとしてしまうと,条件が成就しないと債権者が著しい不利益を被ってしまうという点である。出世払い契約でいえば,債務者が出世しなければ返還義務が発生しないので,貸し付けた金銭が全額棒引きされるのと同じである。今回の判例も,債権者は工事を既に完成させているので,対価の支払いがないと,完全なただ働きとなってしまう恐れが非常に強いのである。
 債権者において,こうした不利益を全て甘受した場合でなければ,支払い方法があたかも停止条件的記載となっていても,これを法的な意味で停止条件とするのは当事者の合理的意思解釈に反するというのが,一つの法則として言えるのではなかろうか。

 条件か期限かが争われた,おもしろい判例といえそうである。