実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

定期建物賃貸借の書面による説明義務(1)

2010-07-20 14:25:26 | 最新判例
 先週の金曜日の最高裁判例で,借地借家法38条2項の書面があったとした原審の認定に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例が,最高裁ホームページに掲載された。
 この判例の事案は,要するに,公正証書による定期建物賃貸借契約の一文に,説明書面の交付があったことを確認する旨の条項があり,賃借人において本件公正証書の内容を承認した旨の記載もあるが,賃貸人がそのこと及びその公正証書を示して更新がない旨を説明したと主張立証しても,借地借家法38条2項所定の書面を交付して説明したことを主張立証したことにはならないという判例である。
 いくら,公正証書たる賃貸借契約書に,説明書面の交付があったことを確認する旨の条項があったとしても,事実として別途書面の交付による説明がなければ,借地借家法38条2項の要件を満たしていないことは明らかなので,この判例は当然といえば当然である。
 このように,当たり前の判決なのであるが,この判例の実体法的なポイントをあえて言えば,更新がない旨を記載した書面を,契約書(借地借家法38条1項の契約書)とは別の書面として,同条2項書面を現に交付して説明しなければならないという当たり前のことを改めて判示した点にあるというべきであろうか。