実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

株主総会と敵対的企業買収(2)

2009-05-30 21:38:15 | 会社法
 昨日の続きです。

 まずは,十数年の間になぜこのような大きな様変わりが生じたのか,私なりに簡単に想像してみたい。
 「シャンシャン総会」全盛期は,大株主といえば,企業間による株式の持ち合いとなれ合いによる株主ばかりであり,大株主は経営に意見を述べることはなかった。いわば,紳士協定のようなものであり,自らが大株主となっている会社の株主総会で意見をすれば,逆にその会社から自らの株主総会で意見される。そこで,互いに株主総会で意見を述べないことで,自らの会社の経営を自由に行ってきた。このような株主構成では,零細な投資家でしかない個人株主の意見など,企業にとって聞く耳を持つ必要がなかったのである。
 ところが,バブル経済崩壊後,企業業績は急落し,株価は大きく下落した。企業は,保有していた株式の資産価値の目減り(これには,企業会計制度が,原価主義から時価主義に代わりつつあったことも影響していよう)を防ぎつつ,資金調達をする必要から,持ち合っていた保有株式を市場に売りに出した。このようにして,株式の持ち合いが自然と解消されていったのではないかと想像される。
 株式の持ち合いが解消されていく当初は,株式の買い手はほとんど存在せず,株式市場は供給過剰になって(もちろん,企業業績の悪化も手伝っている),売りが売りを呼ぶ展開となり,株価も大きく下落していた。そこに,外国籍の投資ファンドが,まさに黒船に乗ってやってきたといっても過言ではないのであろう。外資系ファンドが日本株式を買いあさっていった。その後,国内法が整備されてきたこととも相まって,国内でも投資ファンドが設立され,機関投資家として現れるようになった。こうした,国外,国内の投資ファンドによる買収を恐れる企業が,個人株主を大事にするようになり,個人株主を引き留めておくために,あの手,この手を尽くして個人投資家に対して企業業績をアピールするようになってきたのである。その最大のアピールの場が株主総会であるといっても過言ではあるまい。
 以上は,私がバブル経済崩壊後に見ていた世の中の動きをもとに想像してみた現象であるが,いかがであろうか。