Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Bill Vanaver

2006-10-01 | Folk
■Bill Vanaver / Bill Vanaver■

 ニューヨーク州イサカを拠点に、良質なアルバムを多く残した Swallowtail Records のアルバムを前回に続いて紹介しようと思います。 品番から分かるとおり、前回取り上げた Bill Destler の 1枚前にあたるこのレコードは、1972 年に発表された Bill Vanaver のファーストソロです。 ジャケットに本人が描いた自画像は、まるで George Harrison のようですね。
 そんなこのアルバムですが、収録曲は大きく 3つに大別することができます。 一つめのカテゴリーは、「世界のフォークソング集」とでも題しましょうか。 ブルガリアのダンス・チューン「Kopanista」、ギリシャのフォークシンガー Giannis Markopoulos なる人物の曲「1940」、当時はソ連領だったグルジアのダンスチューン「Lezghinka」が、このカテゴリーに該当します。 
 二つ目は、「人に教わった曲集」です。 本人が丁寧にライナーノーツを残しているので、そんな経緯がわかるのですが、Rosalie Sorrels に教わったという「The Hounted Hunter or : The Walker In The Snow」、Tom Gilfellon (この人はどんな人か知りませんが)に教わった「Mad Tom Of Bedlam」、Ramblin’ Jack Elliott に習ったという「If I Were A Carpenter」が該当します。
 最後のカテゴリーは「カバー集」ということで、Woody Guthrie の「Italian Red Wine」や、Tim Hardin の代表作「If I Were A Carpenter」などが、ここに当てはまります。

 最初のカテゴリーは、フォークソング、もしくは世界のルーツミュージックの研究的な意味合いが強いのですが、ここは Bill Vanaver の音楽に向き合う姿勢が普通のシンガーとは異なることを表しているようです。 もしかして、大学の研究テーマだったりしたのでしょうか。 二つ目と三つ目のカテゴリーは、当時の歴々のミュージシャンからの影響や親交が伝わってきます。 なかでも、「If I Were A Carpenter」はオリジナルが 3分にも満たないのに対し、ここでのバージョンは 6分を超えるものとなっています。 中盤でのギターソロが長いのですが、本人のライナーによると「トルコ調のギターブレイク」とのこと。 いずれにしても、このようなカバーはほぼ同時代のものとしては画期的です。
 「South Bound Train」は、Bill Vanaver 最初に聴いたフォークシンガーだという Big Bill Broonzy の曲。 唯一ハーモニカのサポートの入る曲ですが、Bill Vanaver が見たのは Big Bull Broonzy の生前最後のライブだったとのこと。 

 さて、このアルバム以降の Bill Vanaver の軌跡を追ってみました。 彼は 1972 年に Livia Drapkin という女性と、The Vanaver Caravan を結成。 これはルーツミュージックに根ざした音楽やダンスをパフォーマンスするコミュニティのようですが、今もなお活動を続けているようです。 その公式ページからは、古き良き音楽文化を伝承するべく活動している様子を伺い知ることができました。 また、1977 年に行われたインタビューと Bill Vanaver の写真が掲載されているサイトも発見。 Mt. Airy で行われたというこちらのインタビューも興味のある方はのぞいて見て下さい。

 

■Bill Vanaver / Bill Vanaver■

Side-1
Jordan Is A Hard Road To Travel
Kopanista
The Hounted Hunter or : The Walker In The Snow
1940 (Markopoulos)
I Gave Myself To The Highway (Phillips/ Vanaver)
Mad Tom Of Bedlam

Side-2
Lezghinka
Italian Red Wine (W.Guthrie)
South Bound Train
If I Were A Carpenter (T.Hardin)

Phil Shapiro: mouth harp on ‘Jordan Is A Hard Road To Travel
Walter Feld man: percusiion on ‘Kopanista’ and ‘Lezghinka’
Ted Rotante : mouth harp on ‘South Bound Train’

Producer : Phil Shapiro
Recording Engineer : Ken Frause
Cover and Liner Notes : Bill Vanaver

Swallowtail Records ST-2



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