Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

John Bailey

2006-10-03 | SSW
■John Bailey / Before Man Learned To Fly■

 流れにまかせて、Swallowtail Records 特集になってしまいましたが、この際だから僕の持っているアルバムの若い順にご紹介して行こうと思います。 で、これはST-5 という品番なので、5 番目の作品。 経歴不詳の John Bailey が 1975 年に発表したソロ・アルバムとなります。
 ジャケットに描かれた人々のイラストの雰囲気が、Genesis の「A Trick Of The Tail」に似ているのですが、このデザインと文字のレイアウト、さらにはざらっとした手触りの紙質も気に入っています。 同じレーベルの Bill Destler とは大違いですね。

 さて、それはさておき、この John Bailey の特徴は Richard Thompson や Loudon Wainright Ⅲ に似た声質とボーカル・スタイルです。 ちょっと鼻にかかった声だと、こんな感じに肩の力が抜けるのかなと思ってしまうほど、リラックスしたボーカルです。 
 アルバムは、ベースとドラム、パーカッションの 4人編成の曲と、ギターの弾き語りの曲が、ほぼ交互に連なっています。 バンドスタイルの曲では、オープニングの「Sixteen Banks In Boston」が出色。 1 曲目ということもあるのですが、John Bailey の本質はブルースにあると思ってしまうほどのテイストです。 どこかの誰かさんの「アンプラグド」みたいな雰囲気です。 他にも、ルーズフィットなスワンプ「Two Colors」、陽気な田舎風ファンク「When Do You Know That You’re Down」、シンプルなロック「I Can See」、アップテンポなブルースにJohn Ronginski の奏でるvibe ソロが、やけにクールな「Four Hundred Miles Of Blues」などで息のあった演奏を堪能することができます。 バンドスタイルの曲のなかで唯一のバラード「If Now We’re Only Forever」は、曲の完成度が高いですね。 気持ちを押さえながらも微妙に感情移入するボーカルは心に染みてきます。
 一方、ギター 1本での弾き語りも多くあるのですが、孤独感や空虚感が漂う曲に、この時代ならでは趣を感じ取ることができます。 なかでも、「Sing Me This Song」は、何だかいたたまれない様な切なさに満ちた曲。 朴訥としたボーカルが切なさを助長しているかのようです。 ラストの「To A Passerby」は、Andrew Gaus という他人の曲。 自身のアルバムのラストに持ってくるにはそれなりの理由があるのでしょうが、なるほどこの曲もプライベート感あふれるラブ・ソングでした。 過ぎ去っていく友人に対して、もう少し一緒に時を過ごしたかったとつぶやくこの歌はまさに私小説の世界ですね。 このアルバムを静かな秋の夜にじっくりと聴いていて、改めて気づかされました。 音の隙間って大切だなあと。
 
 さて、いつものように John Bailey の足跡をたどろうとして、ネット検索を試みたのですが、同姓の人物が多く、これがこのアルバムの John Bailey に間違いないというものを見つけることはできませんでした。 プロフィールも写真もないまま、このレコードだけが唯一の手がかりなのですが、あまり深く追跡することは野暮なように思えてきました。 
 というのも、長い年月で物事を考えると、このレコードにとって僕は単なる「Passerby」に過ぎないのですから。

 

■John Bailey / Before Man Learned To Fly■

Side-1
Sixteen Banks In Boston
Two Colors
Sing Me This Song
Lonely Sinner
Song For Dave
When Do You Know That You’re Down

Side-2
I Can See
Sailing Ships
If Now We’re Only Forever
Four Hundred Miles Of Blues
To A Passerby

The Songs are by John Bailey
Except ‘Sailing Ships’ by Greg Abess and Al Gabral
And ‘To A Passerby’ by Andrew Gaus

Al Gabral : drums
Bill Teitsworth : electric bass
John Ronginski : vibes and percussion

Production by Phil Shapiro
Engineering by Ken Coleman
Cover drawing and design by Jack Sherman

Swallowtail Records ST-5



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