Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

James Durst

2011-01-23 | SSW
■James Durst / Songsmith■

  Songsmith とは「作曲家」という意味。 ほとんど見かけない表現なので、古語に近いものかもしれません。 以前、The Songsmith という 3 人編成のグループを取り上げたことがありますが、この言葉を目撃したのは、それ以来の 2 回目です。

  アルバムは A 面がライブ録音、B 面がスタジオ録音という構成。 ともに、イリノイ州でのレコーディングです。 品番が PX01ということで、Phoenix Songs というマイナー・レーベルの最初のリリースとなったレコードと推測しています。 幼少のころ The Kingston Trio や Brothers Four で音楽に目覚め、その後 Pete Seeger、Tom Paxton、Phil Ochs そして Bob Dylan の影響を受けたという James Durst ですが、その傾向は A 面に強く反映されています。

  ライブ録音の A 面は James Durst のギターの弾き語りを軸に、曲によってはブズーギ、ハープシコード、マンドリンなどが彩りを演出しています。 ライブ録音であることを忘れてしまうかのような静寂のなかで淡々と進行するさまは、Phil Ochs のライブ盤と同じ雰囲気です。 曲が終わって、一斉に拍手が入るのですが、歓声は少しも入らないので、肩のこるような硬さが終始つきまといます。 1978 年に Northwestern University のホールでレコーディングされたものですが、この時代性と場所を考えると、不思議な雰囲気です。

  スタジオ録音の B 面に入ると、楽器の種類も増え、フォークよりも SSW 的な居心地に変化していきます。 子供の声の SE から始まる「Next To You」は後半部に挿入される薄いシンセとリリカルなピアノの絡みが印象的なミディアム。 AOR とまでは行かないまでも心地よい浮遊感が魅力となっています。 つづく「To Jesus」は Gram Parsons 直系なカントリー。 Anne Schwartz という女性が Emmylou Harris と同じような息の合ったコーラスを聴かせます。 「Do It For You」はスロウなワルツでリラックスムード満点の楽曲。 感情を抑制したボーカルと演奏、そして心の乱れを投影しているかのようなフルート・ソロが素晴らしい出来です。 個人的なアルバムのベスト・トラックです。 ホーンセクションの導入部からいきなりスワンプに展開する「Credo」は A 面と同じミュージシャンとは思えないほどカラフルなアレンジ。 1974 年に作曲したということなので、James Durst の音楽指向の変移はどうなっていたのか混乱してしまいます。 ラストの「Welcome Home」も 1974 年の曲ですが、こちらはオーソドックスなバラード。 ボーカルの伸びと哀愁あふれるサックスの音色が心に染み入るエンディングを演出しています。

  1978 年にリリースされたこのアルバムは James Durst のファースト・ソロ・アルバムだと思われますが、彼の公式サイトにはこのアルバムに関する記載がまったくありませんでした。 すでに入手困難なものを載せない方針だったのでしょうか、その理由は判りませんが、1970 年代の SSW 作品が好きな方であれば、モノクロの雰囲気あるジャケットも含めて、気に入っていただける内容だと思います。

■James Durst / Songsmith■

Side 1
Cyprus
La Chanson De Massage
Nureyev’s Feet
These Gifts
Wish I Were Here

Side 2
Next To You
To Jesus
Do It For You
Credo
Welcome Home

Produced by James Durst
All songs written by James Durst
Side 1 engineered by Gary Gand and recorded live in concert July 15, 1978
Side 2 engineered by John Miller

James Durst : vocal, guitar
Robert Ganz : bouzouki, second guitar, mandolin
Dan Tinen : harpsicord, wind chimes, piano
Jim Tullio : acoustic bass
Larry Key : flute
Michael Gerry : electric bass
Jim Hines : percussion
Joan Burnstein : strings synthesizer
John Miller : strings arrangement
T.C. Furlong : pedal steel
Luther Didrickson : trumpet
Stan Ryberg : trombone, bass trumpet, horn arrangement
Anne Schawartz : background vocal
Vicky Hubly : background vocal
Judy Storey : background vocal
Josie deChristopher : background vocal

Phoenix Songs PX01



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