徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:奥山真司監修、『サクッとわかる ビジネス教養  地政学』(新星出版社)

2022年04月01日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教


ロシアによる大々的なウクライナ侵攻の影響で、にわかに地政学が脚光を浴びているようで、関連書籍が注目を集めています。
このため、何冊か私の目にも止まり、そのうちの一冊『サクッとわかる ビジネス教養  地政学』をサクッと読んでみました。

私の地政学的知識は非常に断片的で、ヨーロッパに偏っていたのですが、本書によって多少その偏りが是正されたと思います。

まず、そもそもの話として地政学とは何か、という問題から始まり、宗教・文化等に関わらず、地理的な条件から国の振る舞いを見るために、世界勢力をランドパワー(内陸国家)とシーパワー(海洋国家)に分割し、外に出ようとするランドパワーとそれを抑え込もうとするシーパワーの対立と捉え、これを踏まえて世界各地の物流(主に海路)の要所をめぐる紛争の歴史的経緯を見て行きます。
基本的に地図上で状況を分かりやすくビジュアル化するのが地政学の本領なので、世界史でよく出てくる色分けされた地図も使われるのですが、各国がマンガ的に擬人化されているので、さらにマンガ的に理解しやすくなっています。
これならば確かに多忙なビジネスマンでも「サクッとわかる」と断言できます。
大まかな国際関係上の紛争問題の原因と経緯もサクッと把握でき、感情論や理想論抜きに各勢力・国家の持つ地政学的事情や動機から現状を理解し、今後の動きもある程度までは予想できるので、非常に面白いです。

なぜ北方領土は返還されることがないのか、なぜ沖縄に米軍基地が集中しているのか、なぜちっぽけな尖閣諸島が重要なのか、なぜロシアがクリミア半島を併合し、ウクライナを抑えようとするのか等々

もちろん本書は地政学の「さわり」くらいの表面的な入門書に過ぎませんが、そういうものと無縁な生活を送っている大抵の一般人にとっては、まずそのようなものの見方があるということを学ぶのが肝要かと思います。

目次
はじめに
Chapter 1 地政学のルールを理解せよ! 基本的な6つの概念
Chapter 2 関係国とのリアルな情勢を知る 日本の地政学
Chapter 3 世界を動かす大国の戦略が見える アメリカ・ロシア・中国の地政学
Chapter 4 さまざまな思惑が複雑に絡み合う アジア・中東・ヨーロッパの地政学
おわりに