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書評:藤𠮷 豊・小川真理子著、『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた』(日経BP)

2023年03月15日 | 書評ー言語

「文章術」のベストセラー100冊を1冊にまとめた本書は、とかく情報が溢れて取捨選択できずに途方に暮れることの多い現代人にとって、時間節約の福音書です。
文章力や書く技術に関する本は大量にあり、選択肢が多くて選べない典型的な状況です。
そんな中で、藤𠮷 豊・小川真理子氏の『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた』は最初の一冊として優れています。
メールや広告、プレゼン、ブログ、作文、論文、小説など。〈書く〉場面は多い。それぞれの目的に応じた書き方の定番があるものです。とはいえ、目的いかんにかかわらず、書く上で留意しなければならないことはあるものです。さまざまな分野のプロの書き手たちの多くが共通して推奨する事項を本書は分かりやすいランキング順で、ポイントを押さえて解説してくれます。

目次
Part1 100冊を集めてわかった本当に大切な「7つのルール」
1位 文章はシンプルに
2位 伝わる文章には「型」がある
コラム 「型」を使えば、誰でも1時間でブログ記事が書ける
3位 文章も「見た目」が大事
4位 文章は必ず「推敲(すいこう)」する
5位「わかりやすい言葉」を選ぶ など
Part2 100冊が勧めるスキルアップ「13のポイント」
8位 思いつきはメモに、思考はノートにどんどん書く
9位「正確さ」こそ、文章の基本
10位「名文」を繰り返し読む
11位 主語と述語はワンセット
12位 語彙力をつけろ、辞書を引け など
Part3 さらに文章力を高めるための「20のコツ」
21位 とりあえず、書き始める
22位 「何を書くか」を明確にする
23位 文末の「である」と「ですます」を区別する
24位 体験談で説得力を高める
25位 書き始める前に「考える」 など
おわりに(1) 「文(ぶん)ハ 是(こ)レ 道(みち)ナリ」 藤吉豊
おわりに(2) おわりがはじまり。さあ、書き始めよう 小川真理子
参考にさせていただいた名著100冊 書籍リスト

私自身、プロとは言わないまでも書く機会が多く、書くこと自体には抵抗を感じません。しかし、自分の文章の良し悪しはあまり自分では判断できないものです。誰に向けて書いているのか明確でなければ、ポイントがずれたり、ブレたり、ことばや表現の難易度に揺れが出てきてしまいます。
本書の第1位に挙げられている〈シンプルさ〉は、ことばにしてしまうと月並みですが、これが具体的に「1文は60字以内」と数字で言われると、途端に実用性が増します。
また、逆説ではない単純接続の「~が」は使わない、と決めてしまうだけでも、文が短くなります。「XXXが話題になっています、皆さんはどう考えていますか。」のような「~が」の用法は、話しことばでは柔らかい感じがするかもしれません。けれども、文章の場合は、1文が長くなりすぎる一因。これを削除するだけでも文章がずいぶんとシンプルになりそうです。

梅棹忠夫氏の『知的生産の技術』のあとがきには次のような一節があります。「くりかえしいうが、実行がかんじんである。実行しないで、頭で判断して、批判だけしていたのでは、なにごとも進展しない。(略)安直な秘けつはない。自分で努力しなければ、うまくゆくものではない。」
肯定しかできない真理です。
ただ、ムダな努力も確かにあるので、正しい努力の仕方を学ぶ目的で本書を読むことから始めるのがおすすめです。

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