昨日シリーズ最新作の『スリジエセンター 1991』を読んで、前作が気になってしまい、『ブラックペアン 1988』上・下を再読した後、シリーズ第2弾の『ブレイズメス 1990』(2012年発行)も再読してしまいました。タイトルからも分かるように、前作から2年後という設定です。外部研修を終えて東城大に戻された世良雅史は佐伯病院長から与えられたミッションを果たすべく、ニースの国際学会へ行きますが、目当ての天才外科医・天城雪彦が学会講演をドタキャンしたため、彼がいるモナコ公国モンテカルロに向かいます。心臓のバイパス手術の更なる進化型、閉塞した血管自体を切除して代替血管に置換する「ダイレクト・アナストモーシス(直接吻合法)」を確立し、世界でただ一人それを実行できる天城は、モナコのモンテカルロハートセンター部長であるものの、手術はカジノで全財産の半分をかける「シャンス・サンプル(赤か黒の二者択一)」に勝った患者のみに施術するという医師で、医療常識を相当逸脱しています。世良雅史のミッションは天城に佐伯病院長からの手紙を手渡すことでしたが、天城は受け取っても読む義理はないし、いらぬ選択を迫られるのが嫌だから受け取りたくないとだたをこね、一見簡単そうな世良のミッションが急遽難題に代わってしまうというスリルが面白いです。
天城は世良になにがしか感じるものがあったらしく、日本行きに同意し、こうして規格外の天城爆弾が東城大附属病院で炸裂することになります。第2弾は天城が日本初の公開手術を成功させ、将来の日本の医療崩壊から医療を守るための布石として桜宮でスリジエハートセンターを設立する構想をぶち上げるところで「次巻に続く」となっています。もちろん高階講師が完全に敵に回ったことを示す伏線も張られています。
『ブラックペアン』はそれ単独でも完結した作品と言えますが、『ブレイズメス 1990』は完結編の『スリジエセンター 1991』とセットです。とはいえ、天城というトンデモ外科医がモナコから佐伯病院長の差し金で桜宮に来たことと、公開手術を成功させたことを了解していれば、細かいことを忘れていても完結編の理解には困りません。
再読して初めて気が付いたのですが、公開手術終了直後の学会会場でかのチーム・バチスタの外科医・桐生恭一が学生として天城に質問しに来て、天城にアメリカ留学を進められた上に、アメリカの心臓疾患専門病院の部長に直接紹介されるエピソードがあります。『チーム・バチスタ』に繋がる因縁がこんなところにちょろっと隠れているとは!
このように作品同士の関連性を見つけるのも海堂作品を読む楽しさの一つですね。