『星が吸う水』には表題作の他『ガマズミ航海』の女性の性をテーマにした作品2編が収録されています。
『星が吸う水』の主人公鶴子は自分が勃起をし、性欲発散を「抜く」という感覚を持ち合わせていることを普通じゃないかもしれないと少々悩みつつも大事にしていて、その思いをもし理解されるなら友達や恋人らしき人物と分かち合いたいと願っています。しかし彼女の友人の一人は自分を「商品」と考え、「いかに高く売るか」に重きを置いており、もう一人の友人は性欲が一切ないという。
『ガマズミ航海』は、温もりをしゃぶりたいがために男と性行為を繰り返すが「本当のセックス」は違うものだと考える結真と、セックスを苦痛に感じ彼氏に嫌悪感を抱きつつも別れられない美紀子が「性行為じゃない肉体関係」を求めて実験をします。
どちらも何か実験的な感じのする作品です。性のあり方についての固定観念や「女性に性欲はない」的な偏見をお持ちの方にはなかなかショッキングでチャレンジングな作品だと思います。メッセージは「性的嗜好は人それぞれで良し」という一面と「性欲も睡眠欲や食欲に同じように簡単に愛情を介さず処理できれば楽なのに」というところでしょうか。正直その辺はよく分からないのですけど。
この作家は「普通」「常識」といったものを破壊し、新たなアスペクトを模索・提示するので興味深い側面が多いですが、「普通とは何か」を問う作品には共感しても、性や出産をテーマにしたものはあまり波長が合わないようです。嫌悪感を抱くところまではいきませんが、「ふーん、そうなんだ」という以外の感想を持てないというのが正直なところです。