徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:辻村深月著、『サクラ咲く』(光文社文庫)

2018年07月12日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『サクラ咲く』(光文社文庫)は、「約束の場所、約束の時間」、「サクラ咲く」、「世界で一番美しい宝石」の3篇が収録された短編集。「約束の場所、約束の時間」と「サクラ咲く」の2編は同じ中学を舞台としており、「約束の~」の主人公が「サクラ咲く」に先輩としてちょこっと登場します。「世界で一番美しい宝石」は高校生のお話。

「約束の場所、約束の時間」

若美谷(わかみや)中学2年の武宮朋彦のクラスに転校してきた菊池悠は、実は療養のために未来から来た男の子で、未来から持ち込んだゲームを朋彦に偶然見られてしまったことから事情を打ち明けて仲良くなるという心温まる友情物語です。

「サクラ咲く」

本好きで引っ込み思案であることを気にしている若美谷中学1年の塚原(つかはら)マチが主人公。ある日図書室の本に挟んであった「サクラチル」と書かれたメモを発見し、別の本にも同じ筆跡のメモを見つけたため、それを書いている人とシリーズ本を介して文通のようなことを始めます。その謎の文通相手は誰なのかという謎解きの要素と、普通の中学生的悩み、友情、淡い恋の要素があります。作者の優しい視線が感じられるストーリー。

「世界で一番美しい宝石」

3人だけの映画同好会で自作映画を撮るために主演女優を探していた一平はある日「図書室の君」に出会い、どうしても彼女を撮りたいと感じ、彼女に出演依頼をしますが、彼女は今は止めてしまったものの演劇部で『嵐が丘』の幼少時と大人のキャスリンの役を両方演じた経験者なので、女優には適役のはずなのですが、彼女は依頼を断り続けます。一平のしつこさに負けて、出した交換条件は、彼女が子供のころに読んだことがあるという、世界一の宝石職人の(絵)本を見つけること。なかなか青春しているお話。

3篇に共通するのは、一般に「地味」と言われる子の視点ですね。「地味」な子が学校で自分の居場所を獲得する物語とでもいいましょうか。どれもほっこりできるお話ですが、大人向けの小説とは言えませんね。

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