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宮田珠己『東南アジア四次元日記』

2008-06-15 16:10:15 | ノンジャンル
 昨日の岩手・宮城地震での大規模な山崩れを見て、やはり自然の力の前には人間は無力だと思いました。人間はもっと自然に対して謙虚になる必要があると思います。

 さて、「晴れた日には巨大仏を見に」が面白かった宮田珠己さんの'01年作品「東南アジア四次元日記」を読みました。著者が10年間のサラリーマン生活を捨て、フリーライターになるべく40万の予算で半年ばかり東南アジアで面白いものを探す旅の日記です。
 宮田さんはみうらじゅんさんが見たら喜びそうなものが大好きで、意味不明のもの、ちょっとこれここにあったらまずいんじゃないのってもの、あるいは視点を変えると突然不思議な物体と化すものを独特の嗅覚で見つけだし、本で数多く紹介してくれてます。
 国的にはミャンマーが一番不思議なものに溢れているのですが、ここではタイの地獄を立体的に表現した寺ワット・ラナロンウアを紹介します。入り口を入ると、数人の体型バランスがでたらめの男たちが、横たわる1人の僧侶にサッカーボール大の石を寄ってたかって投げつけてる像に迎えられ、次がケルンのような石を積んで作った柱の上にドラム缶を押し上げてる男の像(何の罪を犯しているのかは不明)。ワニと虎に前後をはさまれ、ひえ~という顔をしているピンク色の少女の像。女を張り倒して背中から馬乗りのなっている男の像。うんこする男とうんこを掃除するもうひとりの男の像。(著者はお寺なんだから、うんこだけはやめてくれ~、と心の中で叫んでいました。)そしていよいよ地獄絵図へ。大男が大きな釜に死者は放り込んでいる釜ゆで地獄。釜の中には血まみれになった死者がうごめき、釜の周囲には骸骨になった死者が茫然と立ち尽くしています。次は逆さ吊りにされコンドルに体をついばまれている死者ですが、発狂したのかこの死者は笑っています。そして次は2m以上もある白い死者がひょろひょろと林のように立ち並んでいます。死者は痩せてあばらが浮き出て、体のあちこちから出血し、しかも頭が2つあったり、首が折れて背中にくっついたりと、おそらく生前の行ないの報いを受けているだろう死体も目立ちました。後は、鳥男、牛男、亀男、顔が足の裏男、腹が顔の男といった半分動物(?)になった、生前に動物を虐待したと思われる男たちの像、針の木を登らされ、犬に襲われている男、高さが10mぐらいあるひょろ長い、全身が発疹で覆われている男女、本当に痛そうな、大きなノコギリで体を真ん中から真っ二つに着られている男などがありました。
 著者はこの旅に対して、面白いものを沢山見れて充実感で一杯だと述べています。そしてあとがきではこのように述べています。「実際に旅をしていながら、ここではないどこか別の世界を求めているような旅だった。」「まったく理解できない何者かに出会って混乱するような経験、つまりそれが発見というものであるなら、現代の旅の中では発見がほとんどなくなってしまっている。それはガイトブックを持っていくとかいかないとかいうレベルの話ではなく、テレビや映画、雑誌などの情報によって世界の大枠が見えてしまっているということである。」「私はさまよう快感を探してさまよってきたのは、失われてしまった旅の感じをせめて想念の中で味わいたかったからなのかもしれない。」実際、著者は意味不明なものに出会うと狂喜し、まぬけなものに出会うとニンマリし、それまで人が明確な意味を見出せなかったものに出会うことが旅の喜びと感じているようでした。
 この「東南アジア四次元日記」は写真も豊富に掲載されていて、著者が実際に見て来たものを写真として見ることができます。そういった点でもとても楽しい本でした。無条件にオススメです。

宮崎誉子『三日月』

2008-06-14 17:08:22 | ノンジャンル
 6月10日の朝日新聞の朝刊に在宅でパソコンを使って仕事をする「テレワーク」という仕事の形態が増えている、という記事が載っていました。これだと通勤時間が節約でき、身体障害者でもできるということで肯定的な記事でした。が、これってパソコンでの高い技術を持つ人しか、その恩恵を受けられないんですよね。高い技術を得るにはお金がかかります。ということで、貧乏人には無縁の仕事のようです。

 さて、宮崎誉子さんの最新刊、去年の10月に刊行された「三日月」を読みました。働く女性が主人公の3編の中編からなっている本です。3編のページの色や行組を変えるなど、装釘にもこった本です。
 第一話「脱ニート」は、祖父に養ってもらっていた19才の太った女性が、祖父が夜シクシクと泣く姿を見て、アパレルの卸の会社でパートで働くことにします。根が正直者の彼女は思ったことをズバズバ言い、こんな狭い世界の中であくせく働いてもどないなもんじゃ、と思っていたことから、気の合う上司と出会い、デブセンの歯科医を結婚相手として紹介されます。そして彼と登山をした際、急に芸術に目覚め、アーティストになる夢を持つようになる、という話。
 第二話「チョコレート工場の娘」は、先生に侮蔑の言葉を浴びせられたことで学校に行かないことに決めた11才の娘ルリは、父にもその件は認められますが、その代わり後継者でもある1人娘に無給で自分の工場で働くことを命じられます。どの作業も大変ですが、持ち前の明るさで乗り越え、それでも2ヶ月を過ぎたころから学校が恋しくなり、契約社員の人から「新発売のるりチョコを学校で配って宣伝し口コミヒットを狙うのも経営者の娘としては必要じゃない?」と言われ、学校に行く決心をする話。
 第三話「三日月」は高校を中退し子離れしない母親から離れるため単身東京に出て来て寮に入り工場で働く17才の娘。仕事は大変だが指導役の金子さんの人柄に引かれ、仕事を一生懸命にやり、やりがいのある仕事、楽しい仕事を金子さんから学びながらも、最後にはいつかは金子さんを超えてやるという気持ちになる、という話。

 「脱ニート」は、常に甘いものを食べている主人公の強烈なキャラもありますが、彼女とからむ姐肌の上司やコスプレのお嬢様社員、仕事中に話しかけれくる嫌味なパートとの会話がいつもの宮崎作品と同様ぶっとんでて、文句無しに楽しめます。また、主人公の心理描写も思いもつかない比喩や独特のカタカナ表現でなされ、これも作品の魅了になっています。「チョコレート工場の娘」は主人公が11才の娘でごく普通の子なので、一生懸命仕事をする姿が健気で、応援したくなりました。しかししっかりした子で「脱ニート」の19才の主人公よりもまともな言葉で話しますし、それでも甘えると「ニャ」というところなどは、やはり宮崎節でしょう。またゴシック体の文字とそうでない文字が混在しているのも珍しい試みだと思いました。「三日月」は一番普通の小説で、やはり会話の部分が多いですが、「脱ニート」ほどぶっとんだ会話もなく、出て来る人もまともな人ばかりなので、落ち着いて読めました。ただ、人生とは、死とは、自殺とは、と真面目なテーマも出て来るので、そう言う点では他の2作とはちょっと雰囲気が違うかもしれません。
 句点が極端に少なく、その代わりビックリマークが異常に多く、それが独特のリズムを生んで読んでて楽しくなる宮崎さんの本は、もっとメジャーになっていいと思うのですが、世間的にはどういう評価なのでしょうか? 私はすぐにでも直木賞を取ってほしいと思っているのですが‥‥。
 詳しいあらすじについては「Favorite Novels」の「宮崎誉子」のコーナーにアップしましたので、興味のある方はぜひご覧ください。それにしても宮崎さんの作品は文体が面白いし、会話も面白いので、ついそう言う面白い部分をそのまま残そうとして、あらすじがすごい分量になってしまいました。その点ご了解ください。

米国の軍事費の突出ぶりにビックリ!

2008-06-13 18:20:24 | ノンジャンル
 6月10日の朝日新聞の夕刊に'07年の軍事費の多い国ベストテンが載っていました。その結果は、
1(1)米国     5470
2(2)英国      597
3(4)中国      583
4(3)フランス    536
5(5)日本      436
6(6)ドイツ     369
7(7)ロシア     354
8(9)サウジアラビア 338
9(8)イタリア    331
10(10) インド     242   (単位は億ドル、かっこ内は'06年の順位)

 米国の突出ぶり、すごいですよね。2位の英国の10倍にも迫る金額。これを見ても今の世界は米国という超大国が1つあって、それ以外の国は1つでは全然たちうちできないことが分かります。こんな所からもブッシュ大統領の国連軽視の姿勢が出て来るのでしょう。
 それから日本が5位というのもまずいんじゃないですか? 平和憲法を世界で唯一持ち続けてきた国が世界第5位の軍事費を使っているというのは、どう考えても誰も納得しないと思います。どんどん削って弱者の救済のために使ってもらいたいものです。
 そして記事には「世界の軍事費は冷戦後最高になった」とも書かれていました。特に中国の軍事費はこの10年で3倍にも増えたそうです。中国には今だに自分たちが世界で一番偉いという「中華思想」というやっかいなものが残っているようなので、嫌なニュースです。
 そういえば冷戦終了前後は米国とソ連の間で軍縮会議が持たれていたように思うのですが、最近軍縮という言葉も聞かれなくなっていますよね。早期の軍縮会議の開催を望みます。

阿曽山大噴火『裁判大噴火』

2008-06-12 15:43:57 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞の朝刊1面のトップに「生活保護107万世帯に 地デジ受信機 支給へ」という見出しの記事が載っていました。とてもいいことだと思います。ただ、記事の中でこれを実現するには大金がかかる、という記述があり、そんなに大金を出しても貧困層に楽しみを与えてあげよう、という意味でなのか、それともそんな大金をかけてまでやるべきことなのか、という意味でなのか、この記事を書いた記者の意図を図りかねる文章となっていました。こうした記事には、記事を書いている記者がこの出来事を肯定的に捕えているのか、否定的に捕えているのか、はっきりこちらに伝わる形で書いてもらいたいものです。

 さて、北尾トロ氏が著書の中で言及していた大川興業所属の傍聴マニア・阿曽山大噴火さんの'04年作品「裁判大噴火~若手芸人渾身の裁判傍聴記~」を読みました。北尾氏の「気分はもう、裁判長」と同じように、裁判の傍聴の仕方から始まり、いかに裁判が面白いか、様々なエピソードを交えながら述べていく本です。
 まず、笑ったのは、強姦の裁判中に、傍聴席から携帯電話が鳴って、その着メロが何と「ドラエもん」の主題歌で「♪あんなこといいな~ ♪できたらいいな~」と法廷中に鳴り響いてしまったこと。被害者がそこにいたら笑い事ではありませんが、何ともまぬけで、笑いました。
 それからこれは北尾氏の著作にも取り上げられていたかもしれませんが、自分が石原裕次郎の弟だと言い張り、車を盗んで小樽の石原裕次郎記念館に挨拶をしに行こうと思った、と語る誇大妄想狂の男。皆が笑いを我慢している中で、書記官だけが笑ってて、裁判官に注意されていたそうです。
 そして出会い系サイトで知り合った女性に払った金を女性を殴って取りかえした男に対するエロ丸出しの検察官の質問。検察官「出会い系サイトで知り合った女性とは、いままで何人ぐらいと会ったことあるの?」被告人「過去に四人です」検察官「えっ? そんなに‥‥。会った女性とは性交渉してるんだよね?」被告人「はい」検察官「そのぉ‥‥セックスの約束はどうやるの?」被告人「メールのやり取りで」検察官「具体的にはどうやるの?」被告人「メールに『フェラをしてほしい』とか『騎乗位でして欲しい』って打って送ってました」検察官「で、女性はどんな反応示すの?」被告人「『いいよ』とか‥‥」検察官「ふーん。断る女性はいなかったの?」被告人「断る人はいませんでした」検察官「へぇ~!」と、もう検察官、出会い系サイトで援交やる気まんまんです。
 他にも自分が刺した夫が自分の首を締めながら謝ったという訳の分からぬ話とか、超能力を認めてしまった裁判とか、初傍聴の人を見つけては案内人を務め、裁判の今後の日程表を人にあげられるように常に持ち歩く傍聴マニアのおじさんとか、弁護人からも責められる痴漢とか、面白いネタ満載です。また、東京地裁だけでなく、地方の地裁の様子を探るため、松本、甲府、静岡まで遠征し、陪審員制度を考え、裁判のテレビ中継についてもコメントし、裁判に関することテンコ盛りの本でした。1日で読んでしまいましたが、満足です。
 そして著者は宗教マニアでもあるそうで、法の華の裁判では、法の華の実態にも少し触れていて、お経が般若心経のぱくり(「はんにゃ~はらみた~」が「はんにゃ~てんぎょう~」になってる)というのは余りにひどさに笑ってしまいました。いづれは著者の宗教に関する本も読んでみたいと思っています。
 阿曽山大噴火さん、オススメです!

小泉吉宏『シュークリーム』

2008-06-11 16:31:31 | ノンジャンル
 6月5日リクルート発行のフリーペーパー「R25」に、世界最古の生きた樹木が発見された、という記事が載っていました。その樹齢、何と9550年。写真も載ってましたが、何かひょろっとした樹で、とてもそんなに長い間生きていたとは信じられません。木ってすごいですね!

 さて、どこかで推奨されていた小泉吉宏さんの絵本「シュークリーム」を読みました。
 OLの私が会社の帰り、5個入りのシュークリームのパッケージを買って、4個まで食べると、最後の一個が「食べないで」と言う。よく見ると、細い足があり、目もあった。私はシュークリームを飼うことになり、砂糖と牛乳と卵、バター、あと小麦粉とコーンスターチをほんの少しをエサとして、霧吹きで水分を適度にかけ、時々欲しがるバニラエッセンスをあげた。小さい皿にエサを乗せると、小さい舌で舐める。霧吹きで水をかけると「う~っ」とおやじのような声を出す。公園や職場に連れて行き、留守番で新聞販促者を撃退もしてくれる。そしてまた生きているシュークリームを期待して5個入りパッケージを買って帰ると、メスのシュークリームが入っていた。そして1ヶ月くらい、2匹のシュークリームと過ごすと、子供が生まれた。その後はすごい速さで子供を産み始めたので、私は次々に生きていないシュークリームを食べ太ってしまったが、一計を案じ、会社を辞めてシュークリーム屋さんを始めた。店は繁盛し、生きている子供がまた子供を産み、私はただ立っているだけで、楽しく苦労のない生活ができた。しかしやがて初代のシュークリームが元気がなくなり、145個の子供、孫、ひ孫たちに囲まれて、彼は息をひきとった。彼が死ぬと他のシュークリームも次々に死んでいき、私は半年後、店とたたんで、会社に戻った。今でも帰りにシュークリームの5個入りパッケージを買うと、シュークリームたちを埋めたお墓の前で食べるようにしている、という話です。

 シュークリームがかわいく、ファンタジーとしてよくできた話だと思いました。ただ、小説版「シュークリーム」というのもあるとのことで、短編集に収録されているらしいのですが、こっちの方が推奨されていたのかもしれません。まあ、それほど長い物語でなはいので、大差はないと思うのですが‥‥。かわいいシュークリームに会いたい人には、オススメです。