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上橋菜穂子『天と地の守り人・第三部』

2008-06-29 15:57:31 | ノンジャンル
 上橋菜穂子さんの'07年作品「天と地の守り人・第三部」を読みました。
 タルシュ軍はついに新ヨゴ領内に攻め入り、大勝します。その時、新ヨゴ軍に徴兵させられていたタンダは重傷を負います。バルサは村人に介抱されているタンダを探し当てますが、既にタンダの左腕は腐り始めていて生死の境をさまよい、バルサはタンダの左腕を斬り落とし、命を救おうとします。
 一方、チャグムはサンガルとロタの騎兵を従え、都に迫るタルシュ軍を追い、都を守る新ヨゴ軍と挟み撃ちにし、タルシュ軍に壊滅的な打撃を与えます。都に入ったチャグムは、これまでの戦況と都がまもなく大洪水に飲み込まれるので民を避難させてほしいと願いでますが、帝は好きにするがよい、と言い、自分は都に残る道を選びます。そして東側に回っていたタルシュ軍の本隊は、チャグムの親友であり、新ヨゴの星読博士見習いでもあるシュガの入れ知恵によって、平野に誘き寄せられ、都を飲み込んだ濁流に飲み込まれ、頭上からの矢の攻撃も受け、降伏します。大洪水の後、新しい帝になったチャグムは、新しい都の建設を始めるとともに、民主主義を夢見るシュガと、民を一番に考える政を行なう決心をします。タンダもバルサの献身的な看病のおかげで明るさを取り戻し、二人は一緒に暮らすことになります。

 「精霊の守り人」から始まったシリーズもこの本ももって大団円を迎えることとなりました。全10巻、長い道のりでした。最後にはチャグムは父を殺すことなく帝になり、民の幸福を第一に考える政を行なう決心をし、バルサは戦で左腕を失いながらも陽気な心を取り戻したタンダとともに暮らし、めでたしめでたし、という結末でしたが、シュガが最後に王制を否定し民主政治を夢見る部分で、このシリーズの底を流れていた思想が読み取れたような気がします。それにしてもこれだけの多くのキャラクターを書き分け、架空の地図も作り上げ、おのおののキャラクターが交錯しては別れ、また交錯するというこの大河小説を書いた上橋菜穂子という作家の仕事ぶりは、それこそ神から託されて仕事をしているのではないかと思えるほどの、素晴らしさでした。もし創作ノートのようなものがあれば、是非見てみたい気がします。'08年の6月の段階での最新刊は、このシリーズの登場人物を主人公にした短編集となっています。これから読むのが楽しみです。とにかく、上橋菜穂子さん、楽しい時間をありがとうございました!
 なお、詳しいあらすじは、「Favorite Novels」の「上橋菜穂子」のコーナーにアップしておきました。興味のある方は、ぜひご覧ください。