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宮崎誉子『三日月』

2008-06-14 17:08:22 | ノンジャンル
 6月10日の朝日新聞の朝刊に在宅でパソコンを使って仕事をする「テレワーク」という仕事の形態が増えている、という記事が載っていました。これだと通勤時間が節約でき、身体障害者でもできるということで肯定的な記事でした。が、これってパソコンでの高い技術を持つ人しか、その恩恵を受けられないんですよね。高い技術を得るにはお金がかかります。ということで、貧乏人には無縁の仕事のようです。

 さて、宮崎誉子さんの最新刊、去年の10月に刊行された「三日月」を読みました。働く女性が主人公の3編の中編からなっている本です。3編のページの色や行組を変えるなど、装釘にもこった本です。
 第一話「脱ニート」は、祖父に養ってもらっていた19才の太った女性が、祖父が夜シクシクと泣く姿を見て、アパレルの卸の会社でパートで働くことにします。根が正直者の彼女は思ったことをズバズバ言い、こんな狭い世界の中であくせく働いてもどないなもんじゃ、と思っていたことから、気の合う上司と出会い、デブセンの歯科医を結婚相手として紹介されます。そして彼と登山をした際、急に芸術に目覚め、アーティストになる夢を持つようになる、という話。
 第二話「チョコレート工場の娘」は、先生に侮蔑の言葉を浴びせられたことで学校に行かないことに決めた11才の娘ルリは、父にもその件は認められますが、その代わり後継者でもある1人娘に無給で自分の工場で働くことを命じられます。どの作業も大変ですが、持ち前の明るさで乗り越え、それでも2ヶ月を過ぎたころから学校が恋しくなり、契約社員の人から「新発売のるりチョコを学校で配って宣伝し口コミヒットを狙うのも経営者の娘としては必要じゃない?」と言われ、学校に行く決心をする話。
 第三話「三日月」は高校を中退し子離れしない母親から離れるため単身東京に出て来て寮に入り工場で働く17才の娘。仕事は大変だが指導役の金子さんの人柄に引かれ、仕事を一生懸命にやり、やりがいのある仕事、楽しい仕事を金子さんから学びながらも、最後にはいつかは金子さんを超えてやるという気持ちになる、という話。

 「脱ニート」は、常に甘いものを食べている主人公の強烈なキャラもありますが、彼女とからむ姐肌の上司やコスプレのお嬢様社員、仕事中に話しかけれくる嫌味なパートとの会話がいつもの宮崎作品と同様ぶっとんでて、文句無しに楽しめます。また、主人公の心理描写も思いもつかない比喩や独特のカタカナ表現でなされ、これも作品の魅了になっています。「チョコレート工場の娘」は主人公が11才の娘でごく普通の子なので、一生懸命仕事をする姿が健気で、応援したくなりました。しかししっかりした子で「脱ニート」の19才の主人公よりもまともな言葉で話しますし、それでも甘えると「ニャ」というところなどは、やはり宮崎節でしょう。またゴシック体の文字とそうでない文字が混在しているのも珍しい試みだと思いました。「三日月」は一番普通の小説で、やはり会話の部分が多いですが、「脱ニート」ほどぶっとんだ会話もなく、出て来る人もまともな人ばかりなので、落ち着いて読めました。ただ、人生とは、死とは、自殺とは、と真面目なテーマも出て来るので、そう言う点では他の2作とはちょっと雰囲気が違うかもしれません。
 句点が極端に少なく、その代わりビックリマークが異常に多く、それが独特のリズムを生んで読んでて楽しくなる宮崎さんの本は、もっとメジャーになっていいと思うのですが、世間的にはどういう評価なのでしょうか? 私はすぐにでも直木賞を取ってほしいと思っているのですが‥‥。
 詳しいあらすじについては「Favorite Novels」の「宮崎誉子」のコーナーにアップしましたので、興味のある方はぜひご覧ください。それにしても宮崎さんの作品は文体が面白いし、会話も面白いので、ついそう言う面白い部分をそのまま残そうとして、あらすじがすごい分量になってしまいました。その点ご了解ください。

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