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上橋菜穂子『天と地の守り人・第一部』

2008-06-27 15:47:34 | ノンジャンル
 上橋菜穂子さんの'06年作品「天と地と守り人・第一部」を読みました。
 南の大陸のタルシュ帝国は北の島国のサンガル王国を手に入れ、いよいよその北の大陸にある新ヨゴ皇国を攻略しようと考えます。新ヨゴ皇国の皇太子チャグムは、タルシュ帝国の罠にはまり、捕虜となりますが、自国に帰って自国の帝を殺し、自らが帝になってタルシュ帝国の枝国(植民地)になる約束をタルシュ帝国の第二王子のラウルとし、母国に帰る船に乗ります。が、タルシュ帝国で捕虜となっている間に枝国になった国の悲惨な姿を見ていたチャグムは、ラウルとの約束を破り、母国の隣国のロタ王国とサンガル王国と同盟を結んでタルシュ帝国の侵攻を防ぐため、1人船から海に飛び込み、姿を消します。
 海に飛び込む前に、チャグムは旧友の女用心棒バルサと国での親友で宮にいるシュガに手紙を書き、バルサはチャグムを助けるために、チャグムを探しに行きます。港町でチャグムが持っていた宝石が取引されているのを知り、その宝石を奪った海賊から、チャグムがロタの大領主スーサンを訪ねるつもりだと言っていたことを聞きだします。バルサはスーサンの城の門衛から情報を聞き出そうとしていましたが、タルシュの第一王子とつながりがあるスーサンの兵隊に捕われそうになります。そこをタルシュの第二王子の密偵ヒュウゴに助けられます。ヒュウゴはタルシュの密偵だが、他の国を次々に攻略していくことはそろそろやめた方がいいという考えを持っていました。その点で、帝が独善的なチャグムの母国とではなく、北の大陸の他の国、ロタ王国とサンガル王国の同盟にチャグムに一役買ってもらい、タルシュの攻略を思いとどまらせたいと思っていました。その思いを話すと、バルサもタルシュに協力し、チャグムに早く会って、彼の身を守りたいと思います。しかし、ヒュウゴのアジトはロタ王のために働くカシャル〈猟犬〉に襲撃され、ヒュウゴとバルサは別れ別れになり、バルサはカシャルの頭領から、自分たちがチャグムをスーサンの城から逃亡させ、現在チャグムは、ロタの政務を仕切るイーハン王子のところへ、カシャル〈猟犬〉の護衛を受けて向かっていると聞き、バルサは一旦は安心します。が、その後ヒュウゴからの知らせで、タルシュの第一王子側がチャグムに刺客を放ったと聞き、バルサはチャグムを守るため、後を追います。イーハン王子のもとにバルサが着いた時には、既にチャグムは去った後だった。イーハン王子は新ヨゴとロタとの同盟を断ったという。チャグムはそれでは、とサンガル王に会いに向かったらしい。バルサが追い掛けると、刺客に捕らえられたチャグムに追い付き、死闘の末刺客を倒し、バルサとチャグムは共にサンガルへ向かうのであった、という話です。

 今回も政治の話が大半を占め、このシリーズの仲間との楽しい旅という要素はあまり見られなくなっています。特に国の政治に翻弄される民衆の悲惨さが強調され、政治の醜さ、冷酷さが描写されています。そうした世界の中で民の平和を願い、生涯を為政者として生きる決意をしたチャグムは最後になってようやく姿を現し、バルサとの最強タッグを組むところでこの小説は終わっています。チャグムの理想は現実のものになるのか、そしてそれが達成されるまでにどんな困難が待っているのか、楽しみです。また上のあらすじでは省略しましたが、バルサの親友の呪術師タンダも新ヨゴの草兵(徴兵された素人の兵士)に取られ、最前線に身を置いています。彼の今後も大注目です。