先日お知らせした通り、今日から4日間、一日一作品つづ、ジョン・フォード監督の映画がWOWOWで放送されます。題して「30年代のジョン・フォード」というシリーズ。今日放送されたのは、蓮實重彦氏がフォード映画のベストワンに推す'35年作品「周遊する蒸気船」です。
あらすじは、「Favorite Movies」の「John Ford」の項に掲載しておきましたので、そちらでご覧になっていただくとして、今回は細部についてこだわってみました。
まず、開巻直後のシーン。蒸気船の前甲板で白ずくめの服に黒いシルクハットという宣教師が、酒は悪魔の飲み物だと言い、私も以前は飲んでいたが、今は酒を止めて豚から人間に戻ったと言います。それを最前列で聞いていた酔っ払いのフランシス・フォードが賛意を表し、右手を挙げますが、そこにはラム酒の瓶が握られています。宣教師は直ちに取り上げ、川に捨ててしまいます。
と裏の甲板では、ウィル・ロジャーズが酒は百薬の長であると言い、病気がちの聴衆の1人を舞台に呼び、彼が2瓶買うと、雪崩をうったようにラム酒が売れて行きます。その中でフランシス・フォードもちゃっかり買っています。
ジョン・フォードの実兄であり、彼を映画界に引き入れた張本人であるフランシス・フォードは、痩身で無精髭をたくわえ、ユーモラスで騙されやすく正義感が強い人物として、この時代のフォード映画にはかかせない役者でした。この映画でも彼の楽しさが堪能できます。
そして蒸気船に客を呼ぼうとろう人形館を作っているとき、モーゼが2体あるので、1体はジェシー・ジェームズにしようと言ったり、キングジョージなんて聞いたことがないから、ワシントンにしようなど、ウィル・ロジャーズも笑わせます。
そして保護者であり父のような愛情を持つウィル・ロジャーズと家族の虐待を受けていたヒロインとの関係は、グリフィス監督の「散りゆく花」における保護者で恋心を持つ中国人と父親の暴力にさらされるヒロインの関係を思い出させるものでした。
留置所のシーンも面白く、夜に娘の恋人を自首させようと保安官宅をウィルが訪れると、2階の窓から現れたパジャマ姿の保安官は、これで中に入れといてくれ、と留置所の鍵をウィルに投げる始末。恋人は牢屋の中でノコギリ(こんなもの、牢屋に入れていいの?)で音楽を奏でると、他の黒人の囚人たちがコーラスで歌うというしみじみとしたシーンもありました。
そしてラスト。娘の恋人を絞首刑から救うため、蒸気船の薪がわりに「ワシントンを燃やせ!」とウィルが言ってろう人形を燃やし、最後には大量に積んであるラム酒を燃やして爆発させながら猛スピードで進む蒸気船のシーンは、もうめちゃくちゃなおかしさです。
まだ見てない方、DVDで発売されてるようでしたら、3000円ぐらい出してもお釣の来る面白さです。ぜひご覧になってください。
あらすじは、「Favorite Movies」の「John Ford」の項に掲載しておきましたので、そちらでご覧になっていただくとして、今回は細部についてこだわってみました。
まず、開巻直後のシーン。蒸気船の前甲板で白ずくめの服に黒いシルクハットという宣教師が、酒は悪魔の飲み物だと言い、私も以前は飲んでいたが、今は酒を止めて豚から人間に戻ったと言います。それを最前列で聞いていた酔っ払いのフランシス・フォードが賛意を表し、右手を挙げますが、そこにはラム酒の瓶が握られています。宣教師は直ちに取り上げ、川に捨ててしまいます。
と裏の甲板では、ウィル・ロジャーズが酒は百薬の長であると言い、病気がちの聴衆の1人を舞台に呼び、彼が2瓶買うと、雪崩をうったようにラム酒が売れて行きます。その中でフランシス・フォードもちゃっかり買っています。
ジョン・フォードの実兄であり、彼を映画界に引き入れた張本人であるフランシス・フォードは、痩身で無精髭をたくわえ、ユーモラスで騙されやすく正義感が強い人物として、この時代のフォード映画にはかかせない役者でした。この映画でも彼の楽しさが堪能できます。
そして蒸気船に客を呼ぼうとろう人形館を作っているとき、モーゼが2体あるので、1体はジェシー・ジェームズにしようと言ったり、キングジョージなんて聞いたことがないから、ワシントンにしようなど、ウィル・ロジャーズも笑わせます。
そして保護者であり父のような愛情を持つウィル・ロジャーズと家族の虐待を受けていたヒロインとの関係は、グリフィス監督の「散りゆく花」における保護者で恋心を持つ中国人と父親の暴力にさらされるヒロインの関係を思い出させるものでした。
留置所のシーンも面白く、夜に娘の恋人を自首させようと保安官宅をウィルが訪れると、2階の窓から現れたパジャマ姿の保安官は、これで中に入れといてくれ、と留置所の鍵をウィルに投げる始末。恋人は牢屋の中でノコギリ(こんなもの、牢屋に入れていいの?)で音楽を奏でると、他の黒人の囚人たちがコーラスで歌うというしみじみとしたシーンもありました。
そしてラスト。娘の恋人を絞首刑から救うため、蒸気船の薪がわりに「ワシントンを燃やせ!」とウィルが言ってろう人形を燃やし、最後には大量に積んであるラム酒を燃やして爆発させながら猛スピードで進む蒸気船のシーンは、もうめちゃくちゃなおかしさです。
まだ見てない方、DVDで発売されてるようでしたら、3000円ぐらい出してもお釣の来る面白さです。ぜひご覧になってください。