gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

アニエス・ヴァルダ監督『壁画、壁画たち』&『ドキュメントゥール』

2021-10-11 02:33:00 | ノンジャンル
 アニエス・ヴァルダ監督の1981年作品『壁画、壁画たち』と『ドキュメントゥール』を池袋の新文芸坐で観ました。どちらもヴァルダがアメリカの西海岸に滞在していた時に撮った映画です。

 まず『壁画、壁画たち』は、ストリートアートとしての壁画を撮っていく映画で、ナレーションもヴァルダが行なっていました。壁画の叫びやつぶやきを聞き取り、「ここに来た」の証として「キルロイ」、メキシコ系アメリカ人を「チカーノ」と呼んでいます。

 同じく1981年の『ドキュメントゥール』は、『壁画、壁画たち』の姉妹編で、題名は「うそをつく記録」という新語で、フィクションとノンフィクションが混交されています。撮影はヌゥルダ・リヴで1969年からキャリアを始めた女性で、音楽を担当しているジョルジュ・ドリリューは、アラン・レネがヴァルダに紹介した作曲家で、ヴァルダはドリリューのことを「素晴らしく作品を理解していて、他人の苦痛が分かった人だ」と評しています。主演女優のエミリーは編集者で、その子供のマルタンを演じたのはドゥミとヴァルダの息子であるマチュー・ドゥミです。全裸の男は山岳写真家で、2015年の地震で亡くなった人物です。そしてデルフィーヌ・セイリグが声だけで出演しています。
 そしてこの映画はマージナル(抑圧的)な人々を扱っていて、ヴァルダ自身が、シングルマザーであり、外国人であり、周囲の人々と文化も異なり、非ハリウッド的な映画作家であるということで、自らもマージナルであることを自覚して撮った映画です。
 またこの映画は停滞した時間であり、悲しい映画であり、“苦痛”を描いた映画なのですが、ヴァルダはこの映画を気に入っているとのことでした。
 そして分別を持っている人の悲しみを描いた映画でもあり、同性愛者のドゥミとの別離(その理由には言及されていないのですが)が断片化され、身体的にも物的にも言葉的にも夫の不在が際立っていて、二人の間に残されたマチュー・ドゥミから再出発するしかないことを描いています。

 どちらも興味深く見させていただきました。ヴァルダの名前はもちろん既に知っていましたが、これほどキャリアのある監督(それもフェミニズムを代表する女性監督)とは知りませんでした。大寺先生、ありがとうございました。