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佐々木聰監督『ふたりの桃源郷』

2021-05-07 05:48:00 | ノンジャンル
 先日、「あつぎのえいがかん kiki」にて、「山口放送 開局60周年記念作品」として作られた、佐々木聰監督の2016年作品『ふたりの桃源郷』を観ました。

 パンフレットの「物語」に大幅に加筆修正させていただくと、

「山口県岩国市美和町の山奥で暮らす田中寅夫さん、フサコさん夫妻。
二人が電気も水道も通っていないこの山で暮らすには、理由がありました。戦後、無事南部戦線から帰還した寅夫さん。しかし戦前に二人が住んでいた大阪の家は消失してしまっていて、二人はともかく食べ物を確保し、生きていくために、山口県岩国市美和町の山の一部を買い取り、夫婦で一からやり直そうと、自分たちの手で切り開いた大切な場所だったのです。
日本中が高度経済成長に沸いた時代、三人の娘たちの将来を思って山を離れ、大阪で子どもたちを育て上げた寅夫さんとフサコさん。しかし、夫婦で還暦を過ぎた時、「残りの人生は夫婦で、あの山で過ごそう」と、山に戻ることを選んだのでした。
自分たちで収穫する季節の野菜、山で採れる山菜、山から引いた湧き水を薪で沸かした風呂、寝室代わりの古いバス、月に一度届く娘からの手紙…。しかし、ふたりの山暮らしに、「老い」は静かに訪れます。田んぼはある時期から耕作をあきらめ、畑だけ耕すようになる二人。山菜取りも足取りがおぼつかなくなった寅夫さんに代わって、フサコさんが行なうようになります。
離れて暮らす三人の娘たちは、喘息の病に倒れ、入退院を繰り返すようになった寅夫さんを心配し「二人で山を下りてほしい」と、説得を試みます。最期まで「自分らしく生きる」ことを望む夫婦と、「大阪で両親の面倒を見たい」と願う子どもたち。お互いを大切に思うからこそなかなか答えの出ない、家族の葛藤と模索が始まります。それぞれが真剣に“家族”と向き合うなかで、しだいに子どもたちの心に変化が訪れます。寅夫さんが先に亡くなった後、施設に入ったフサコさんは認知症が進みます。そこでフサコさんの三女とその夫は、フサコさんを連れて山に戻る決心をします。そしてフサコさんも天に召された後、山には、かつての寅夫さん、フサコさん同様、生き生きと畑を耕す三女夫婦の姿があったのでした。」

 寅夫さんの喘息のゼイゼイいう呼吸音、そして、寅夫さん亡きあと、認知症になり、夫の不在を信じられず、山に向かって「おじいちゃーん、おじいちゃーん」と呼びかけるフサコさんの清んだ声が忘れられません。寅夫さんの魅力的な表情、二人して写真に写る時、思わず寅夫さんの腕を取って、寅夫さんの体に自分の体を寄り添わせるフサコさんの姿も特記しておきたいと思います。

 →サイト「Nature Life」(表紙が重いので、最初に開く際には表示されるまで少し時間がかかるかもしれません(^^;))(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto