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イ・ジュンイク監督『金子文子と朴烈(パクヨル)』その1

2019-10-08 07:57:00 | ノンジャンル
 神奈川県厚木市にある「アミューあつぎ」にある映画館で、イ・ジュンイク監督の2017年作品『金子文子と朴烈』を観ました。以下、パンフレットに掲載されていた「解説」の一部を転載・改変させていただくと、

「1923年(大正12年)9月1日午前11時58分、関東大震災が発生。その混乱のなか、デマを信じる人々の手によって多くの朝鮮人が虐殺された。このとき警察は各地でデマを拡散し、軍の一部は自ら虐殺に手を染めた。だが2017年5月12日、日本政府は、野党議員が提出した質問同意書に対して、虐殺に「政府が関与した」ことを示す記録はなく、「遺憾の意」を表明する予定はないとする答弁書を決定した。本作は、朝鮮生まれのアナキスト朴烈と、彼の同志であり恋人でもあった金子文子の命を賭けた闘いの記録を克明に調べ上げて作られた物語である。本作の中でふたりは軍や自警団による残虐行為を告発しているが、その虐殺事件は90年経った今でも、日本政府によってなおざりにされているのである。

 1918年の米騒動、1919年の3・1朝鮮独立運動で、民衆の怒りの行動の激しさを目の当たりにしていた日本政府は、関東大震災が発生すると真っ先に暴動の発生を警戒。「朝鮮人が井戸に毒を入れ、暴動を起こしている」というデマが広がるなか、戒厳令を発令した。戒厳令下では、軍や自警団による朝鮮人大虐殺が発生。被害者の総数は今も不明だが、数千人に及ぶ罪のない朝鮮人が殺されたと見られている。日本政府は、国際社会からの非難を避けるため、事件の隠蔽を試みて、アナキスト結社“不逞社”を率いる朴烈を標的の一つに選んだのだ。

 本作の物語はここから始まる。日本の内閣によって捏造された筋書きに気づいた朴烈は、日本の残虐行為に国際社会の目を向けさせるため、あえて立松判事の筋書きにのり皇太子暗殺計画を自白し死刑を覚悟した裁判に持ち込む。朴烈と金子文子の行動は、時の内閣、司法界を驚愕させ日本国内の多くの新聞でも報道されたが、真実の姿は明かされないままだった。本作の制作チームは各新聞社に連絡し、事件当時の記事を取り寄せ、徹底的にリサーチを行なった。本作で語られる出来事は歴史的事実に基づいたものであり、物語を盛り上げるために創造したわけではないと強調するイ・ジュンイク監督はこのように話す。「日本の植民地時代に、日本の最高裁判所に立つこの朝鮮人青年の大胆さには多くの人が驚くでしょう。しかし、この作品で描かれる物語は当時の新聞や記録文書によって証明されている事実に基づくものです」。(中略)

 本作は『建築学概論』『探偵ホン・ギルドン 消えた村』のイ・ジェフンと、イ・ジュンイク監督のミューズとして『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』で注目された新鋭チェ・ヒソがW主演を務め、2017年、韓国で大ヒットを記録、本作は大鐘賞映画祭で監督賞をはじめ5冠、計10冠を記録している。そして、2017年大阪アジアン映画祭では、オープニングで上映され圧倒的に支持された。
 文子を演じたチェ・ヒソは、本作で大鐘賞映画祭新人女優賞と主演女優賞のW受賞のほか、韓国映画評論家協会賞、青龍映画賞などでも新人女優賞を獲得し、一躍スターダムに躍り出た。

 また本作には多くの日本人・在日韓国人俳優が参加。布施辰治を演じた山野内扶(やまのうちたすく)やミン・ジウン、韓国を拠点に活動する在日コリアンの俳優キム・インウ、そして金守珍(キム・スジン)をはじめとした劇団「新宿梁山泊」のメンバーが顔を揃える。確実に韓国映画史上、最高に日本語を駆使する俳優陣が集結したと言えるだろう。(後略)」

(明日へ続きます……)

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto