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斎藤美奈子さんのコラム・その44&前川喜平さんのコラム・その6

2019-10-28 06:52:00 | ノンジャンル
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず10月23日に掲載された「読書と格差」と題された斎藤さんのコラム。その全文を転載させていただくと、
「10月27日から11月9日までの2週間は読書週間だ。毎年この時期には、読書関係の各種調査も発表される。
 若者や子どもの読書離れがささやかれて久しいが、子どもが読む本の数はさほど減っていない。小学生が読む本の冊数は1カ月で約十冊、中学生は約4冊だ。一方、成人の場合は約半数が月に一冊も読んでいない。
 この傾向は読書内容からもうかがえる。十数年前までの調査で「好きな作家」は司馬遼太郎と松本清張が2トップだった。政治家や経済人があげる愛読書も同じ。だがいつしか二人の名前は消えた。私の率直的な感想は「中高年男性が本を読まなくなったんだな」である。
 いわゆる司馬史観にも問題がないとはいえないし、松本清張はミステリー作家である。しかし彼らの作品を通して読者は歴史を学び、社会の暗部にふれ、権力の構造を学んだはずだ。2トップが好きな作家のランク外になったのと、歴史修正主義や自己責任論が幅をきかせだした時期は重なる気がしてならない。
 終身雇用制と年功序列を柱とした日本型企業社会の崩壊も関係しているかもしれない。昔は上司から部下へ、先輩から後輩へと受け継がれた読書体験があったのよね。書籍費も本を読む時間的精神的ゆとりもない現代。格差社会は読書習慣にも影響する。さて今年の結果は。」

 また、10月20日に掲載された「不登校と自死の激増」と題された前川さんのコラム。
「十月十七日に文部科学省が発表した不登校等の調査結果は驚くべきものだった。2018年度の不登校小中学生の数は16万4528人で、前年度比14.2%増。12年と比べれば6年で約1.5倍。激増だ。
 最も多い要因は「家庭に係る状況」で37.6%。次いで「いじめを除く友人関係をめぐる問題」27.8%、「学業の不振」21.6%。一方、「教職員との関係をめぐる問題」は3.1%、「いじめ」は0.6%しかない。学校からの報告だから、学校に都合のいいバイアスがあるとみるべきだろう。
 不登校は「子どもの学校への不適応」ではなく「学校の子どもへの不適応」と考えるべきだ。家庭に問題があっても、学校が安心して過ごせる居場所なら不登校は起こらない。しかし近年、「〇〇学校スタンダード」という画一的な行動を求められたり、自己犠牲を良しとする道徳を押しつけられたりして、学校が子どもたちにとって居心地の悪い場所に変わってきていると感じる。
 同じ文科省調査では、18年度の小中高生の自殺者は332人で、前年度比32.8%増だった。悲しむべき数字だ。何としても自死だけは思いとどまらせたい。自死を選ぶのは家庭にも学校にも居場所を失った子どもだ。彼らには温かい居場所が必要なのだ」。

さらに10月27日に掲載された、「給特法改正案の実効性」と題された前川さんのコラム。
「文部科学省は教師の働き方改革に向けて、教育職員給与特別措置法(給特法)の改正案を国会に提出した。その柱は一年単位の変形労働時間制、教師の年間の勤務時間を業務の繁閑に応じて傾斜配分できる仕組みの導入だ。たとえば、学校行事などの多い四、六、十、十一月は勤務時間を週三時間増やし、その代わり八月に五日程度の休みを設けるのだという。しかし、これで教師の業務が軽減できるだろうか。
 そもそも文科省が標準授業時数を大幅に増やしたので、全国的に夏休みは短くなっている。その夏休み中も、教材作成、補習授業、部活動指導、水泳指導、保護者との個別面談、各種研修など、教師にはいろいろな仕事がある。
 年間二十日の年次有給休暇(年休)の取得は当然の権利だが、実際に年休をすべて消化している教師はほとんどいないだろう。変形労働時間制で休みの日をつくっても、その分年休が減るのでは「朝三暮四」のような話だ。仕事の総量が減らなければ何の意味もない。
 教師の残業時間の「上限」の設定など、業務量管理の「指針」を文科大臣が定めるという。しかし、教師の残業が「自発的な勤務」とされたままでは、実効性は期待できない。「上限」は教師が自発的に守れという話なのだから。教師の労働基本権に立ち返って議論し直すべきである。」

 どのコラムも、他のメディアでは取り上げられていない内容で、とても勉強になりました。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto