本田猪四郎監督の'60年作品『ガス人間1号』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。大学教授の実験台となり、自分の意思で自由に自分の体をガスにできる男が日本舞踊の名取り(八千草薫)と恋に落ちるという話で、主演が刑事役の三橋達也さんでしたが、円谷英二の特撮より、メロドロマの方に重きが置かれているように感じました。
さて、安部譲二さんと山田詠美さんの'14年に刊行された共著『人生相談劇場』を読みました。『婦人公論』'10年11月7日号から'13年10月7日号までに掲載さえた対談記事の中から選ばれた16の記事が収録され、それに書き下ろしの『エピローグ 恋の結末』が加えられた本です。
内容は題名から分かるように、読者の人生相談に二人が答えるというコラムだったはずなのですが、答えはほぼ即答で、後は雑談を二人が楽しくしているといったものでした。
「はじめに」と題された詠美さんの文章から、引用させていただくと、「(前略)絵本作家で、エッセイストとしても御活躍された、故・佐野洋子さんのお宅に私が遊びに行った時のことです。(中略)まだ日が高い時刻だというのに、すっかり御機嫌になった私たちは、好きな男について白状し合いましたが、驚いたことに佐野さんが口にしたのは、私の長い知り合いである安部譲二さんだったので、それなら呼べる! とばかりに、佐野さんに」いい格好をしたい私は、即座に安部さんに電話をかけ、呼び出すのに成功しました。(中略)佐野さんは、その姿を見つけるやいなや、私の背後に身を隠し(たつもり)て、「ちょっとお、なんか、すっごくいい男じゃないのお。私、困るわよお」(中略)と、いつもは、辛辣な口調で気に食わない人物や事柄をぶった切る佐野さんが、ずい分年下の私に散々からかわれたのでした。相変わらず、もてるんだなあ、と久々に会った私は、近付いてくる安部さんをながめながら思いました。(中略)男の魅力の優先順位の第一位が「可愛げ」に他ならない、という境地に達することが出来た女たちには、彼が、お金では“かた”の付かない種類の手間を、うんとかけられた、目に見えない贅沢を身にまとった男だというのが解るのです。膨大な経験を年月が濾過し続けて得た贅沢。そんな贅沢を、時に厳しく、時にユーモラスに、そして、あくまでも真面目に、他人(ひと)様のために役立てること。それがこの本の使命だと思っております。(後略)」と書かれていて、まさにその通りの本になっているのですが、話がやたらに脱線するので、単なる人生相談よりずっと楽しく読めました。なんせ、最後には本気(?)になって安部さんに言い寄る女が現れ、その女に安部さんの奥さんが直談判する場面まで出てくるのですから、面白くないはずがありません。
他にも役に立つかもしれない知識として、夫婦間の関係が冷えてきたら猫を飼うといいというのがあったり、驚くべきエピソードとして、妾が48人いて、子供を52人作った岩谷松平という明治の煙草王がいたと思えば、笹川良一はその上を行ってたり、一方、安部さんに関するエピソードは信じられないような爆笑ものが多く、例えば、エレベーターの中でやりたい女性と二人になったら「おい、すんべ」と声をかけるのを常にしていたとか、日本航空に丸4年いた間に、スチュワーデス74人とやり、フライト中にも搭乗していたスチュワーデス7人全てとやっちゃったとか、自分の子供に「この子のケンカは親が出ます」っていう文字を編み込んだセーターを着せてたとか、これは爆笑ものじゃありませんが、ヤク中よりアル中の方が悲惨だとか、また詠美さんも負けてなくて、女の人の膝枕で耳かきをしてもらうのが男の人の夢だというから、自分もやってあげようと思って、耳かきのかわりに歯間ブラシでごしごしやってあげてたら血まみれになっちゃって、おかしくてゲラゲラ笑ったとか、仲のいい二人の間から次々に楽しい話題が展開して楽しく、しかし真面目な部分はしっかり真面目に厳しく読めました。悩みのある方には是非お勧めの本です。
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
さて、安部譲二さんと山田詠美さんの'14年に刊行された共著『人生相談劇場』を読みました。『婦人公論』'10年11月7日号から'13年10月7日号までに掲載さえた対談記事の中から選ばれた16の記事が収録され、それに書き下ろしの『エピローグ 恋の結末』が加えられた本です。
内容は題名から分かるように、読者の人生相談に二人が答えるというコラムだったはずなのですが、答えはほぼ即答で、後は雑談を二人が楽しくしているといったものでした。
「はじめに」と題された詠美さんの文章から、引用させていただくと、「(前略)絵本作家で、エッセイストとしても御活躍された、故・佐野洋子さんのお宅に私が遊びに行った時のことです。(中略)まだ日が高い時刻だというのに、すっかり御機嫌になった私たちは、好きな男について白状し合いましたが、驚いたことに佐野さんが口にしたのは、私の長い知り合いである安部譲二さんだったので、それなら呼べる! とばかりに、佐野さんに」いい格好をしたい私は、即座に安部さんに電話をかけ、呼び出すのに成功しました。(中略)佐野さんは、その姿を見つけるやいなや、私の背後に身を隠し(たつもり)て、「ちょっとお、なんか、すっごくいい男じゃないのお。私、困るわよお」(中略)と、いつもは、辛辣な口調で気に食わない人物や事柄をぶった切る佐野さんが、ずい分年下の私に散々からかわれたのでした。相変わらず、もてるんだなあ、と久々に会った私は、近付いてくる安部さんをながめながら思いました。(中略)男の魅力の優先順位の第一位が「可愛げ」に他ならない、という境地に達することが出来た女たちには、彼が、お金では“かた”の付かない種類の手間を、うんとかけられた、目に見えない贅沢を身にまとった男だというのが解るのです。膨大な経験を年月が濾過し続けて得た贅沢。そんな贅沢を、時に厳しく、時にユーモラスに、そして、あくまでも真面目に、他人(ひと)様のために役立てること。それがこの本の使命だと思っております。(後略)」と書かれていて、まさにその通りの本になっているのですが、話がやたらに脱線するので、単なる人生相談よりずっと楽しく読めました。なんせ、最後には本気(?)になって安部さんに言い寄る女が現れ、その女に安部さんの奥さんが直談判する場面まで出てくるのですから、面白くないはずがありません。
他にも役に立つかもしれない知識として、夫婦間の関係が冷えてきたら猫を飼うといいというのがあったり、驚くべきエピソードとして、妾が48人いて、子供を52人作った岩谷松平という明治の煙草王がいたと思えば、笹川良一はその上を行ってたり、一方、安部さんに関するエピソードは信じられないような爆笑ものが多く、例えば、エレベーターの中でやりたい女性と二人になったら「おい、すんべ」と声をかけるのを常にしていたとか、日本航空に丸4年いた間に、スチュワーデス74人とやり、フライト中にも搭乗していたスチュワーデス7人全てとやっちゃったとか、自分の子供に「この子のケンカは親が出ます」っていう文字を編み込んだセーターを着せてたとか、これは爆笑ものじゃありませんが、ヤク中よりアル中の方が悲惨だとか、また詠美さんも負けてなくて、女の人の膝枕で耳かきをしてもらうのが男の人の夢だというから、自分もやってあげようと思って、耳かきのかわりに歯間ブラシでごしごしやってあげてたら血まみれになっちゃって、おかしくてゲラゲラ笑ったとか、仲のいい二人の間から次々に楽しい話題が展開して楽しく、しかし真面目な部分はしっかり真面目に厳しく読めました。悩みのある方には是非お勧めの本です。
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)