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吉村仁『素数ゼミの謎』

2009-12-12 16:49:00 | ノンジャンル
 月刊ソトコトで紹介されていた、吉村仁さんの'05年作品「素数ゼミの謎」を読みました。著者が素数ゼミと呼ぶセミの謎を解き明かした本です。
 北アメリカの東部・南部にいるセミは、日本のセミが7年ほどで羽化するのに対し、13年や17年周期で集中して大量に羽化し、その大群の中に数十分いると数時間耳が聞こえなくなるほどで、電話でも会話もできなくなるほどであり、また、それらのセミは群れの中へ中へと移動するので狭い範囲に密集して存在し、数百メートル離れるとまったく姿が見られなくなるほどだそうです。そんなセミたちがみんな木の液を吸うので、現れた場所ではあたりの木が枯れてしまうといいます。そして著者は3つの謎に迫ります。「なぜこんなに長年かけて成虫になるのか」「なぜこんなにいっぺんに同じ場所で大発生するのか」「なぜ13年と17年なのか」です。鍵は氷河期にあったと著者は言います。気温の低下によって、幼虫の生育が遅くなり、成虫になるまでの年数が増えたというのです。そして氷河期に生き残った種は、盆地や暖流のそばや湧き水があった場所など、氷河の影響が少なかった場所、つまりレフュージアと呼ばれる場所で細々と氷河期を生き延びたのであり、狭い場所で確実に交尾相手を見つけるために、いっぺんに同じ場所で羽化する必要が生じたと論じます。そして13や17という大きい素数の周期で羽化すれば、他の周期のセミと交雑する危険が少なくなり、生き延びたのだと推論します。交雑して周期が狂うと羽化した時にメスと出会えずに終わってしまいその種は絶滅してしまうからです。この氷河期のレフュージアに根拠を求めるという推論は、13年ゼミや17年ゼミがアメリカ中にいっぺんに出てくるというわけではなく、地域ごとに13年あるいは17年ごとに出てきて、発生する年は地域によってずれているという事実とよく符合します。
 以上がこの本の内容です。すこぶる真っ当な進化論であり、数字できちんと例証されていて説得力のあるものでした。進化論、もしくは生物の多様性に興味のある方にはオススメです。