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マノエル・デ・オリヴェイラ監督『家路』

2009-12-23 18:48:00 | ノンジャンル
 蓮實重彦先生が本「映画崩壊前夜」の中で絶賛していた、マノエル・デ・オリヴェイラ監督・脚本の'00年作品「家路」をDVDで見ました。
 老優のヴァランス(ミシェル・ピコリ)は舞台が終わった後、妻と娘夫婦が交通事故で亡くなったことを聞かされます。「しばらくして」の字幕。残された孫が庭で自転車に乗っているのを二階の自室から見た後、沈みこむヴァランス。カフェに寄った後、パリの街角を散歩しているとサインを次々にねだられ、靴屋のショーウィンドーで気に入った靴を見つけると買ってすぐに履きます。その夜舞台の後友人とカフェで話し込み、深夜帰宅する途中で追い剥ぎに会い、靴まで盗まれ裸足で帰ります。翌日テレビドラマの出演依頼を受けますがポリシーに合わないと断り、帰りに孫にラジコンを買って家で一緒に遊びます。今度は「ユリシーズ」の映画化で急遽代役を頼まれ躊躇しながらも受けますが、英語のセリフがうまく言えずに監督(ジョン・マルコヴィッチ)に練習するよう頼まれます。練習しているうちにソファで眠りこみ朝を迎えるヴァランス。その日も台詞でダメ出しが相次ぎ、彼はメークアップしたまま台詞の練習をしてパリの街角を家に向かって歩き、周囲から奇異の目を向けられます。家に着き、二階への階段を足取り重く上がるのを背後から見た孫は茫然とし、やがて視線を落とすのでした。
 画面は暗く抑えられ、一つのショットが非常に長く、音も意識的に遮断されるシーンが多いのが目につきました。題材にもかかわらず、ミッシェル・ピコリの持ち味のおかげで暗いというよりも落ち着いた印象でした。靴のエピソードも靴を捕えたショットの光の加減が素晴らしく、これだけでも見る価値があると思います。映画好きの方にはオススメです。