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椎名誠『武装島田倉庫』

2008-09-03 16:08:21 | ノンジャンル
 高野秀行さん推薦の椎名誠さんの'90年作品「武装島田倉庫」を読みました。7つの短編からなる本です。
 「武装島田倉庫」は、厳しい試験の結果、島田倉庫に採用された可児は仕事を覚えた1ヶ月後の頃、北政府が後ろ楯になっている武装集団・白装束の襲撃を他の同僚とともに撃退する話。
 「泥濘湾連絡船」は、大橋が落ちてしまったので、連絡船で商売を始めた漬汁屋に雇われた定吉は、漬汁屋が連れてきた、盲目で波動探知のできるアサコと共に、突然変異した様々な異形生物と油泥の下に潜む障害物を避けて航路を開拓し、漬汁屋が去った後、アサコと結婚し、商売を軌道に乗せる話。
 「総崩川脱出記」は、谷間の河原に住んでいた村人が、北政府の騎馬兵士や異常進化した生物から逃れながら総崩川を下っていく話。
 「耳切団潜伏峠」は、百舌(もず)と呼ばれる青年が、巨大な装甲貨物車の助手になり、悪路や略奪団に妨害されながらも、島田倉庫を目指す話。
 「肋堰(あばらぜき)夜襲作戦」は、廃虚となった商店街に住んでいた青年が、J&Bを1ダース見つけ、買い手を探しに行き、以前漬汁屋と呼ばれていた男に出会い、肉親を殺した北政府の駐屯所を滅ぼすため、ダムを破壊する作戦に参加する話。
 「かみつきうお白浜騒動」は、九足歩行機を運転する若者が、沈船の積み荷を運び出すのを助けている最中に襲ってきた巨大なかみつきうおをやっつける話。
 「開帆島田倉庫」は、装甲貨物車で島田倉庫にやってきた百舌が、故障寸前の貨物車をあきらめ、島田倉庫に雇われるが、ダムの破壊により一個師団を失った北政府が、報復として油の雨を降らしたので、島田倉庫は屋根に帆を張って、油の海へ流れていく話、です。
 どれも世紀末的な近未来の話で、同じ人物が登場することから、同一の時代のエピソードであることが分かります。冒頭の「武装島田倉庫」がわくわくするような始まり方なので、次の章が違う話であることに気付いた時はガッカリしました。できれば、島田倉庫の話で一冊の本を書いてもらいたかったと思いました。文体は非常にオーソドックスなもので、久々に「純文学」という言葉を想起しました。いわゆる「文学」としてSFを楽しみたい方にはオススメです。