吾妻ひでお氏が推薦する乙一氏の「失はれる物語」を読みました。8編の短編からなる短編集です。
第一話「Calling You」は、高校生で友達のいない私は、頭の中の携帯電話で他人と話せるようになりますが、そこで知り合った人の死に立ち会い、過去の自分と話し始めるという話。
第二話「失はれる物語」は、交通事故で右腕の触覚以外の感覚を全て失った私に、元音楽教師だった妻は、腕に文字を書いて私に情報を提供し、私の右腕をピアノにみなして演奏をしてくれます。私は唯一動く右手の人さし指を動かさないことによって、自殺を演出し、妻を自分から解放してあげる、という話。
第三話「傷」は、父の虐待を受け、母に捨てられて暴力的になったオレは、特殊学級に入れられます。母に父を殺され、自分も殺されかけたアサトも入ってきますが、彼は人の傷を自分の体に移動させる能力を持っていました。アサトはいろんな人からもらったケガを、入院して意識のないオレのオヤジの体に移して行きますが、オヤジが死ぬと、彼の体には傷一つありませんでした。アヤトは自分の体に傷を残したままだったのです。親しかったお姉さんの顔のひどい火傷痕も引き取り、病院でありとあらゆる人の傷を引き受けるアサトは死ぬ覚悟なのをオレは知ります。オレが止めるのも聞かず、交通事故で血まみれになっている少年の傷を引き受けたアサトはその場に崩れ落ちますが、アサトは命を取り留めます。いつも優しく他人のことばかり考えているアサトは神様がこの汚れた世界に作った救いなんだ、とオレは言い、希望を持ってこれからは生きて行こうとオレは思う、という話。
第四話「手を握る泥棒の物語」は、自分がデザインした時計を売り出す資金を得るために、映画撮影の見物に来ていた伯母の宝石と現金を盗もうと、壁に穴を開けますが、部屋を間違え、映画のヒロインの手をつかんでしまい、自分が売り出そうとしていた時計を残して逃げます。後日、ヒロインがしていた映画の中でしていた時計が話題になり、自分の時計が売れ始め、同僚と行った彼女の握手会で握手した瞬間、俺があの時の泥棒だと見破られる、という話。
第五話「しあわせは子猫のかたち」は、世界を暗いものと考えるぼくは、引っ越した家で、前の住人で殺された女性に世話してもらったり、いたずらされたりして、彼女の愛猫と過ごし、彼女から世界を明るく見ることを教えられる、という話。
第六話「ボクの賢いパンツ」は、物知りでしゃべるパンツとボクとの友情と別れの話。
第七話「マリアの指」は、姉の友人で美人のマリアが列車に飛び下りて自殺し、死体は数多くの肉片と化します。その夜マリアがかわいがっていた猫がマリアの指をくわえて来ます。ホルマリン漬けにして保存しますが、その際指に青い塗料が付いていたことから、高校の友人がマリアに弄ばれて自殺する一方でマリアが結婚することが許せない姉がマリアを殺したことが分かる、という話。
「あとがきにかえて-書き下ろし小説 ウソカノ」は、彼女がいるとウソをついていた二人が、架空の彼女に励まされ、新たな人生を歩んで行く、という話です。
屈折した話、暗い話が多い中で、一番良かったのは、第三話の「傷」です。アサトの優しさ、先が見えない展開、そして「他人の傷を引き受ける」という着想、ハッピーエンドと、他の話と比べてずば抜けて素晴らしいと思いました。近々この本は映画化されるそうですが、第何話が映画化されるのでしょう? 文庫本の帯を見た限りでは、第一話は少なくとも映画化されるようです。第三話は、映画化はちょっと無理っぽいですね。
ということで、ぜひ第三話だけでも読んでほしい、と思った短編集でした。
第一話「Calling You」は、高校生で友達のいない私は、頭の中の携帯電話で他人と話せるようになりますが、そこで知り合った人の死に立ち会い、過去の自分と話し始めるという話。
第二話「失はれる物語」は、交通事故で右腕の触覚以外の感覚を全て失った私に、元音楽教師だった妻は、腕に文字を書いて私に情報を提供し、私の右腕をピアノにみなして演奏をしてくれます。私は唯一動く右手の人さし指を動かさないことによって、自殺を演出し、妻を自分から解放してあげる、という話。
第三話「傷」は、父の虐待を受け、母に捨てられて暴力的になったオレは、特殊学級に入れられます。母に父を殺され、自分も殺されかけたアサトも入ってきますが、彼は人の傷を自分の体に移動させる能力を持っていました。アサトはいろんな人からもらったケガを、入院して意識のないオレのオヤジの体に移して行きますが、オヤジが死ぬと、彼の体には傷一つありませんでした。アヤトは自分の体に傷を残したままだったのです。親しかったお姉さんの顔のひどい火傷痕も引き取り、病院でありとあらゆる人の傷を引き受けるアサトは死ぬ覚悟なのをオレは知ります。オレが止めるのも聞かず、交通事故で血まみれになっている少年の傷を引き受けたアサトはその場に崩れ落ちますが、アサトは命を取り留めます。いつも優しく他人のことばかり考えているアサトは神様がこの汚れた世界に作った救いなんだ、とオレは言い、希望を持ってこれからは生きて行こうとオレは思う、という話。
第四話「手を握る泥棒の物語」は、自分がデザインした時計を売り出す資金を得るために、映画撮影の見物に来ていた伯母の宝石と現金を盗もうと、壁に穴を開けますが、部屋を間違え、映画のヒロインの手をつかんでしまい、自分が売り出そうとしていた時計を残して逃げます。後日、ヒロインがしていた映画の中でしていた時計が話題になり、自分の時計が売れ始め、同僚と行った彼女の握手会で握手した瞬間、俺があの時の泥棒だと見破られる、という話。
第五話「しあわせは子猫のかたち」は、世界を暗いものと考えるぼくは、引っ越した家で、前の住人で殺された女性に世話してもらったり、いたずらされたりして、彼女の愛猫と過ごし、彼女から世界を明るく見ることを教えられる、という話。
第六話「ボクの賢いパンツ」は、物知りでしゃべるパンツとボクとの友情と別れの話。
第七話「マリアの指」は、姉の友人で美人のマリアが列車に飛び下りて自殺し、死体は数多くの肉片と化します。その夜マリアがかわいがっていた猫がマリアの指をくわえて来ます。ホルマリン漬けにして保存しますが、その際指に青い塗料が付いていたことから、高校の友人がマリアに弄ばれて自殺する一方でマリアが結婚することが許せない姉がマリアを殺したことが分かる、という話。
「あとがきにかえて-書き下ろし小説 ウソカノ」は、彼女がいるとウソをついていた二人が、架空の彼女に励まされ、新たな人生を歩んで行く、という話です。
屈折した話、暗い話が多い中で、一番良かったのは、第三話の「傷」です。アサトの優しさ、先が見えない展開、そして「他人の傷を引き受ける」という着想、ハッピーエンドと、他の話と比べてずば抜けて素晴らしいと思いました。近々この本は映画化されるそうですが、第何話が映画化されるのでしょう? 文庫本の帯を見た限りでは、第一話は少なくとも映画化されるようです。第三話は、映画化はちょっと無理っぽいですね。
ということで、ぜひ第三話だけでも読んでほしい、と思った短編集でした。