うたことば歳時記

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降水量の実感

2015-12-07 21:28:04 | その他
 気候の学習には降水量のデータが欠かせない。そもそも降水量とは、地表に降った雨や雪や氷(霰や雹)を水に換算した堆積を面積で割り、㎜の単位で表した数値である。ただし気象台では0.5㎜単位で計測する。しかし数字だけで示されても、それがいったいどれ程のものなのか、実感が湧かない。そこで、いくつかの基準となる降水量を、実際の生活体験に基づいて理解しておくとよい。
 まず基準になるのは年間降水量である。長年住んでいる地域の雨の降り方については、経験的にどの程度のものか理解していることであろう。そこでそれが数値としてはどれくらいのものか確認するのである。正確な数値は、最寄りの気象台に問い合わせればよい。例えば東京都であれば、およそ1500㎜。しかし数値はすぐに忘れるので、私は身長と比較して理解させ、「身長より少し少ない程度」と表現した。ただし小学生・中学生・高校生では身長が異なり、また男女差や個人差もある。対象となる生徒によって、またその地域によって表現は全く異なってしまうが、とにかく自分の身長を基準におよその数値を体感させるのである。「身長の1.5培」とか「手を上に伸ばした程度」とか、「首の位置まで」とか、色々に表現すればよい。
 次は全国平均の1610㎜と比較させ、自分の地域の降水量が、全国的にはどの程度のものかを理解させる。過去30年の平均では、最も多い高知県では、2547.5㎜、第二位の宮崎県では2508.5㎜、第三位の石川県では2398.9㎜である。最も少ないのは長野県の932.7㎜、次に少ないのが香川県の1082.3㎜、次が岡山県の1105.9㎜である。長野県の生徒は、高知県の降水量を自分たちの経験している降水量の約2.5培と理解し、反対に高知県の生徒は長野県の降水量を自分たちの2.5分の1と理解する。いずれにせよ自分の経験を基準に、比較して理解するのである。その際に、自分の経験している年間降水量を、自分の身長と比較して把握しておけば、比較される他所の地域の降水量がどれ程のものか把握しやすい。同じことは世界の気候の学習にも活用できる。
 雨の気象情報では、よく時間単位の降水量を耳にする。気象予報用語としては、「やや強い雨」「強い雨」などと表現されるが、それぞれに1時間当たりの降水量によってランク付けされている。それによれば、10~20㎜は「やや強い雨」、20~30㎜は「強い雨」、30~50㎜は「激しい雨」、50~80㎜は「非常に激しい雨」、80㎜以上は「猛烈な雨」ということになっている。1時間に1㎜の降水量とは、1㎡に1リットルの雨が降ることになる。1リットルというとかなり多いように聞こえるが、実際には傘をささずに歩いても気にならない程度の雨である。1㎜を越えると、傘をさしたくなり、3㎜になると、路面に水溜まりができる。5五㎜なら傘無しではびしょ濡れになる。この程度の数値を生活体験に照らし合わせて把握しておくと、気象情報も実感をもって理解できるであろう。
 また集中豪雨などについては、よく降り始めからの合計がグラフで示されることがある。100㎜単位の数字を聞いても、それがどれ程のものかは実感が湧かないのであるが、前に述べたようにその地域の年間降水量と比較すれば、「1年に降る雨の約半分が降ったことになる。これは大変なことだ」というように、実感されるのである。