一般財団法人 知と文明のフォーラム

近代主義に縛られた「文明」を方向転換させるために、自らの身体性と自然の力を取戻し、新たに得た認識を「知」に高めよう。

第十六回伊豆高原セミナーに参加して

2010-11-10 00:03:20 | セミナー関連

第十六回伊豆高原セミナーに参加して  
                                    

                                           片桐 祐

 さる9月11・12日の二日間にわたり、伊豆高原ヴィラ・マーヤにて「知と文明のフォーラム」によるセミナーが催されました。「日本の安全保障と今後の世界」をテーマとした今セミナーは、講師に斯界の碩学、坂本義和先生をお迎えしました。  

 第一日目は、日本の安全保障をめぐるいくつかの問題について、坂本先生から話していただきました。その具体的内容の大略を記しますと、第一に、1960年の改定安保にはじまり普天間移設議論にいたるまでの「安保」関係史が展望され、第二に、「国際貢献」や「抑止」といった、「安保」をめぐるコトバのもつ盲点あるいは陥穽について指摘されました。 第三には、今後の紛争例として軍拡競争、資源・環境紛争などが俎上に上りましたが、その中で、食糧問題をかかえる中国の海外進出は欧米の植民地主義の再来にほかならないとの分析が注目されました。そして最後の第四として、意見交換を求める形で、日本の国家と市民の課題をめぐる疑問文が提示されました。すなわち、国家とは? 市民(社会)とは? 東アジア共同体とは? 憲法9条とは? この四つです。  

 第二日目午前は、前日の議論を踏まえ、北沢方邦先生から問題提起する形で、日米安全保障条約の歴史と現状、憲法第9条と自衛権・集団自衛権、日本の安全保障と東アジアの集団安全保障、今後の世界、これら諸点をめぐって、坂本先生との対談というひとまずの形をとりつつ議論がなされました。そして午後は、参加者同士の話し合いが持たれました。  

 さて、二日間にわたって提示された安全保障の諸問題は、どれもみな、わたしにとってたち馴染みがありながら、正面切って考えることを避けてきたようなものばかりです。そして、答えはこうだと簡単に言えそうにないものばかりです。

 セミナーが終わってからもその思いは基本的に変わりません。とりわけ坂本先生から提起された疑問には、参加者の間からも多くの意見が出され、各人のよってたつ視点によってまるで違うとらえ方が可能であることを知らされました(一例をあげれば、国家とは?の疑問のところで、‘国家があってはじめて国民がある‘、‘国民が存在してこそ、国家が ある‘というような対照的なとらえ方です)。  

 しかし、これこそがセミナーの効用というものでしょうが、こうして多様な意見を聞くうちに、この問題を考えるには少なくともこれだけの立場があり、それらを条件をクリアしないと正解には到達しないという、解法へのひとつの道筋が見えてきたことです。いうまでもありませんが、このような意見がだされる背景には、学生から旧政党関係の方々まで、参会された方々の多様性があったあればこそです。そして、もうひとつ、坂本先生の令夫人による、絶妙なるタイミングのご発言が、参会者の積極性を引き出したことは間違いありません。                             



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