・・・ 水族園のマグロの孤独 ・・・
♠ 見たくない葛西水族園のあの水槽のマグロ、ただ一匹の 松井多絵子
1昨日の夕刊に、葛西水族園の水槽のマグロがついに残り一匹になった、という記事があった。この一匹はオスなのかメスなのかが気になる。マグロもメスの方が平均寿命は長いのか。ウサギは淋しいと死ぬという説があるらしいが、マグロだってあの巨大な水槽のなかで、孤独に耐えられるだろうか。一匹のマグロを見る大勢の見物客に囲まれていても、淋しいだろうなあ、残されたマグロは。
海鮮寿司を食べながら「日本に生まれてよかった」、とおもう。外国でもかなり前から「すし」が人気らしいが、日本のようにさまざまな寿司を手軽に食べられないであろう。特にマグロはわさびや海苔との相性がよく私は鉄火巻が大好きだ。スライスされたマグロを生野菜と和え、ドレッシングをかけて食べてもおいしい。私はマグロの顔を見たこともなく、カットされたりスライスされたバラ色のマグロを食べている。
♠ 泳がねば死ぬとうマグロのごとわれは昨日も今日も一万二千歩
マグロは口から鰓に抜ける海水で呼吸をするため、泳ぎ続けていないと死んでしまうらしい。休みなく泳ぎながら捕えられ私たちに食べられてしまうとは、マグロたちに申し訳ない。
葛西水族園回廊型巨大水槽を泳ぐマグロを見たのは10年位前だったか。夥しいマグロが
休みなく泳いでいた。みな同じ方向に泳いでいるのか衝突することもなくまるでマグロのマラソンだった。それぞれ少し離れてかなりの速度で泳いでいたように見えた。
人間の私だって歩かなければ成人病になり死ぬような気する。毎日一万二千歩をノルマにしているが最近は一万歩も無理だ。ケータイの万歩計の記録は毎日が赤字である。水族園のだだ一匹のマグロよ、わたしのために生き続けてね。わたしが生きている間は。
3月26日 松井多絵子
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