☀ 穂村弘はまだ新鮮 ☀
3月16日の朝日歌壇・うたをよむ を読む。<共感とは別の「衝撃」>というタイトルの穂村弘のコラムである。~短歌を読んで共感することがある。その気持ちわかる。僕も前からそう思ってたんだ。~共感は心地よいけれど、それは今の自分の考えや感じ方に仲間がいたことを知る喜びだ。だから、それ以上深く考えることはない。
30年も前のことか。穂村弘がニューウエーブの波頭だったのは。彼はいまだに若い歌人たちを牽引している。老女のわたしも彼から若さを摂取し、生き延びようとしている。
「一方、短歌から共感とはまったく違ったショックを与えられることがある」と、穂村弘は次の歌を挙げている。私の知らない歌を。作者の田中有芽子は若い歌人だろう。
▼ 奇数本入りのパックが並んでる鳥手羽先の奇数奇数奇数 田中有芽子 、
鶏の羽は2枚だから手羽先は偶数のわけだ。でも人間の食料になると一対として売られるとは限らない。パック詰めのから揚げの鳥手羽先は奇数奇数奇数。穂村の解説がなかったら特に注目しない1首である。私は歌を詠むために散歩をしたり旅行までする。しかし、若い歌人たちはコンビニでもドラッグストアーででも詠んでしまう。メロンパンなどもよく歌になる。冷蔵庫のなかの卵や魚、葱やデコポンなどが私に詠んで欲しがっているのに、富士山を見に行くなんて。噴火するかもしれないのに。
▼ 肉体はカップメンとカンヅメと化学記号の直立猿人 (ホームレス) 坪内政夫
昨日の朝日歌壇の入選歌だ。NO3・ホームレス歌人・坪内政夫の投稿歌を馬場あき子が選出している。カップメンは私たちの身近にある手軽な食べ物だ。それが直立猿人にまで飛躍する。身近なものから人類の起源をおもうこともできる。さあこれから台所で1首を。
3月17日 松井多絵子
短歌情報 新刊歌集
✿ 加藤治郎第9歌集 『噴水塔』 角川学芸出版・本体2500円
ちちのみの父は逝きたりははそはの母は小さな缶珈琲を飲む
✿ 伊藤京子歌集 『木母』 青磁社・本体2500円
ぶつけ合ふエッグとエッグ ひび入りて負けしエッグが先に焼かれる