> 自由が丘のデート <
✿ 花ばなのなかにうち伏し横たわる裸婦のあなたの瞳を見たい 松井多絵子
3月になったのに今日も寒い。東京のさくらの開くのは月末だろうか。それまでのデートは屋外は避けた方がいい。ふたりの仲が寒くなってしまうから。 昨日、私は宮本三郎美術館を訪れ暖かなひとときを過ごした。世田谷区奥沢5-18にあるが自由が丘駅から、ゆるやかな坂をのぼれば直に着く。世田谷美術館分館、区の美術館で入場料もお安い。私は老人割引で100円。65歳以下なら200円。今年は開館10周年である。「絢爛な色彩の世界へ」の展示は3月22日(日)まで。
洋画家・宮本三郎(1905~1974)の作品が展示されているのは2階、油彩22点のほかに下絵の素描など19点、四方を絢爛な色彩の油彩画に囲まれていると、体がぽかぽかしてくる。「花と裸婦は生の喜びのモチーフ」。宮本三郎の解放感は春そのものだ。彼の最晩年の作品2作が並んで展示されている。亡くなる前年の✿「生」、花ばなをおもわせる赤などの暖色の交錯するなかにうずくまる裸婦、その隣には絶筆の ✿「仮眠」 やはり花の絨毯らしき上にうつぶせになり横たわる裸婦、「生」よりさらにのびやかな裸婦、宮本三郎が陶酔しながら描いたであろう絶筆。この世は仮眠なのかもしれないですね。宮本三郎さま。
この美術館を去ったのは夕方、でもわたしの体はあたたかった。ゆるやかな坂を下り自由が丘駅、この周辺にはオシャレな茶房が多い。ふたりでカフェオレを飲みながら語り合うのもいいではないか。職場や、学校、家庭のこは忘れて、非日常をあれこれ語らう、ふたり。
3月9日 松井多絵子
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うつくしく力抜けをり藤の花
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夢を追ふことも長寿や零余子飯