えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

殻ちゃん~36回

2015-03-10 09:04:25 | 歌う

            ・・・・ 殻ちゃん~36回 ・・・

 遊歩道の木陰のベンチに塔くんと殻ちゃんが少し離れてすわっている。夏休みはあと5日間だ。午後4時すぎ、セミのなきごえが途切れ途切れに聞こえる。

 殻 ✿「よかったわ。アナタに会えて。すごく話したいことがあるの」

 塔 ◉ 「キミがここでボクを待っててくれるなんて。何かいいことがあったの?」

 殻 ✿「わたしのマンションに鈴鹿ひろ美って女優が住んでいて、3日前に足立ユイの息子を知ってる?って聞かれたの。神山学園の優秀で素敵な男子。わたしと同じクラスだと言ったら驚いていたわ。テレビ局の人から聞いて鈴鹿さんがママに話したら足立ユイの息子は知らないって言ったとか。アナタのママとわたしのママは高校の頃に二人で組んで三陸のアイドル歌手だったそうよ。」

 塔 ◉ 「へー。知らなかった。母はタレントだったことがあると聞いたけど、まさか、、。」

 殻 ✿「その頃、パパが2人のプロデューサーで、アナタのママはお父さんが病気になってママだけ上京して、鈴鹿ひろ美と映画に出たり。でも今は足立ユイはテレビでも活躍して」

 塔 ◉ 「母はキミのパパが好きだったんだよ。だからキミのことを話したがらないんだ」

 殻 ✿「鈴鹿さんはアナタのパパは種市だと思ってた、ですって」

 塔 ◉ 「タネイチ?母はボクの父のことは時期がきたら必ず話すから、って。」

 殻 ✿ 「ごめんなさい。お騒がせして。ママがあなたのママを避けるのが不思議なの。もしかしたらアナタの父はわたしのパパかも。わたしたち兄妹かもしれない、、。」

 塔 ◉ 「まるで小説みたいだなあー。」                                   

 塔くんはベンチから立ち上がり歩きだす。殻ちゃんも少し遅れて塔くんの影を踏みながら歩く。お兄さんかもしれない塔くんの長い影を踏みしめながら。

                もうじき終わります。 3月10日  松井多絵子